♭ルキア(脱色)
「どうしたのだ?そんな浮かない顔をして」
ぼんやりと窓の外を眺めていたら、ルキアが隣にきてそう聞いてきた。俺は苦笑で答えて、視線は窓の外に向けたまま。窓ガラスに映ったルキアは少し不満そうに俺を見ている。
「街は楽しそうだな」
「ああ……『クリスマス』が近いらしいからな」
「そうだな」
気が早い街のイルミネーションは既にクリスマス一色に染まり、それに合わせるように人の心もはやりだすのだろうか。
自分の心は……
不意に肩に触れたぬくもりに視線を移せば、ルキアが頭を預けてきていた。それがとても愛しくて、俺はその細い肩に腕を回して抱き寄せた。
「お前は何を考えているのだ?」
「うん?」
「このところずっとだ。そうやっていつも遠くを見ている」
それはとても寂しい、とルキアは小さく呟くと同時に俺を抱きしめ返した。小さな手で、強く強く……
「私はここにいるぞ?お前の側に。お前は一人ではない。私がいる」
願っていた言葉はただそれだけ。どうして君は分かってしまったのだろう?
「ねぇ、ルキア」
「なんだ?」
君が望む言葉は何?
俺はそれを君に与えてあげる事が出来る?
「ルキアが居てくれてよかった」
「……私は、」
「ルキアが居るから、俺はここにいる」
どうして泣いているんだ?
これは君の望む言葉じゃない?
でも、俺にとっては唯一の真実なんだよ。
「馬鹿者が」
そう言って君は笑った。
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