管理人自爆のため代理リクエスト美佳様。カイル、ラブラブでプロポーズ。 *-*-*-*-*-*-* 「好きだ、愛している」 抑えきれない想いを言葉にすれば、お前は顔を赤くしながら微笑んだ。 そして綺麗な声で言うのだ。 「私もですよ、カイル様」 けれど、どうしても言えぬ一言があった。 「私の妻になってくれ」 幾度となく口に出かけても声にならないその一言。 一国の王が求婚すれば、断る事など出来はしない。だが、それでは意味がないのだ。 無理矢理お前を手にいれても、私の心が満たされる事は無いのだから……。 臆病者だと言われる事よりも、私はお前に断られる事が辛いのだ。 お前の心には、まだあの男がいるのだろう。お前の光であった男が……。 「キョウ、君の父上はどんな人だ?」 「父上の事は……あんまり覚えて無いです。カイル様と同じ金の髪がキラキラしてて、空色の目が僕を見ると優しくなるんです」 キョウは嬉しそうに話した。 顔は朧気にしか覚えていないが、抱き締めてくれた温もりは忘れないと……。 「カイル様も……父上と同じで温かいです。カイル様が父上になってくれたら良いのに……」 嬉しい事を言ってくれるキョウを抱き上げ、頭を撫でる。くすぐったいと笑うキョウの目は、母親と同じ赤と紫のオッド・アイ。 「イル様も言ってます。早くタワアンナを作って下さいって……。それって、カイル様が父上になってくれるってことですよね」 イル……お前は子供に何を吹き込んでいるんだ。 「キョウ……その話、ランカは知っているのか?」 自分からではなく、周りからランカへ結婚の話がいくなど、間抜けではないか。その様なこと、なんとしてでも阻止しなくてはならない。 「母上は知りません。イル様に秘密だって言われました。男と男の約束です!」 「……そうか」 ほっとする反面で、自分の想いが周りに筒抜けだったのかと、何だか恥ずかしい。 私は顔に出やすいのか、それともイルが鋭いのか……後者であって欲しい。 キョウを部屋へ送るとランカに飲まないかと誘われた。好きな女に誘われて断る男はいないだろう。 美しい夜空に、好いた女が注いだ酒。自然と速度は早くなる。 ほどよく酔った体が眠りを誘い、ふらりと倒れそうになる。 「カイル様!」 横から出た細く白い腕に支えられた。 普段、服の下に隠された腕が、夜着のため露になっている。一体、この細い腕のどこに私を支える力があるというのだ。 「大丈夫ですか? 貴方様はご自分の限度をご存知だと思っていましたが……飲みすぎのようですね」 確かに、普段より多く飲んだが、それは……ランカ、お前が酒を注ぐからだ。 「少し横になった方がよろしいですよ」 キョウが眠るのとは別のもう一つのベッドへと腰をかける。水を差し出され、一口飲んでから返した。 「ランカ、ここへ座れ」 不思議そうに近付き、隣に座ったランカを抱き締めた。 「カイル様? どうなさったのです」 いつも通りの余裕のある態度……私がせまってもランカだけはなびかない。 そんなにも、お前の光であった男がいいのか? 私では駄目なのか? 「私では……お前の光になれぬのか?」 酔った勢いでか、知らずに声に出していた。 気が付いた時には、腕の中のランカが珍しく驚いていた。そんな顔も美しいな……と頭の片隅で思う。 ふと、嬉しそうにほころぶ。 「カイル様……貴方様は、私の光ですよ。美しく暖かい、太陽の様なお方です」 私の手を取り、ランカは自分の手で包みこんだ。 冷え症だという、少しばかり冷たい手。私と同じく武器を持ち、それでいて美しく小さな女の手。 「私は、何度もカイル様に助けられました。……それは、あの人を想う時もございましたが、今の私が闇に染まらないのは……キョウとカイル様のおかげです」 ふわりと暖かい風に包まれているような、心地好い気持ちになる。ランカの言葉はスッと私の中に入り、溶けこんでゆく。 「私が太陽ならば、お前は月だ。太陽の光を浴びて美しく輝き、夜を照らす」 空いた片手をランカの頬へと伸ばす。自然と笑みが浮かぶのは、相手がお前だからだろう。 「私の隣で永久に輝き続けてくれないか?」 「貴方様が望まれるのならば喜んで」 恥じらいもなく平然と笑顔で返されてしまうと、男である私の立場が無いのだが……ランカの方が一枚上手ということか。 さすがは一児の母。 「愛している、ランカ……」 「私もですよ」 顔を近付けると、神秘的な左右色違いの瞳が長い睫毛に隠されてゆく。 ふっくらとした柔らかい唇に自分のそれを重ねた。 触れるだけの口付け。それですら、心が満たされる。 「正式な妻として、お前を迎えたい。タワナアンナとして、私を支えてはくれないか?」 「それはできかねます」 ランカは小さく首を振った。やはり、私では駄目なのか? 「私に出来ますのは、カイル様を支える事ではなく……カイル様と支え合うことです」 あぁ、そうだな。太陽が無ければ月は輝けぬのだったな。 「ランカ、私と共に生きよ。私という光を浴びて強く輝き続けるのだ」 「はい、我が生はカイル様と共に……」 より強い太陽の光を浴びて、美しき月の女神は輝き続ける。 どちらが欠けても地は闇に閉ざされてしまう。 永久に、共に寄り添いながら昼の光と夜の光はヒッタイトを照らすのだ。 あとがき *-*-*-*-*-*-* プロポーズって、書くの恥ずかしい。 |