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ずっと君の隣で(2→←8:Side仁王)
そよそよと自分に向かってふく風が銀色の髪を揺らす。
校則違反だと分かっていてこのままにしているのはやはり、彼の気を引きたいから。
きっと、彼には彼女の一人や二人――といったら語弊が生じるが――いるのだろう。
あの紳士的な態度で接して…大切にされているであろう彼女に、殺意に近い嫉妬心を抱く。
たとえ彼女がいよるとしても…それでも、好きなものは好きだ。
いつも、ここから見える図書室の窓の向こう。
たまにずれた眼鏡の位置を調節しながら本を読むダブルスパートナーの親友。
決して向こうからは近付いて来ないけど、そんな距離感も悪くはないと思う。
ただ、もう少し、近づきたい。
―――せめて、あと、1cm。


柳生、


心の中で彼の名前を呼んでみて空を見上げる。
大きな木の下の影。
すごく自分だけの時間が流れているようで仁王はこの場所がとても気に入っていた。
なにより、図書室で読書をしている柳生を調度いい距離で観察できる。
特等席だ。

「俺も末期じゃのう…」

瞼を閉じて柳生の顔を思い浮かべる。
キリッとした目元。
それを隠すように細いフレームの眼鏡。
今時珍しい、しっかりとした七三分け。
綺麗な栗色の髪からはいつもシャンプーのいい香がする。


ああ、柳生に会いたい


そう思い、目を開けて図書室の方を見れば柳生もこちらをみていた。
目が合った瞬間、ビクリとした柳生を見て、仁王は立ち上がる。
そんなに距離はない図書室まで歩いて行き、窓をコンコンとノックする。
鍵を開けるように目で訴えればそれが通じたらしくカラカラと音を立てて窓が開く。

「柳生」

今度は声に出して名前を呼ぶ。
なんだかそれすら贅沢な気がして、とても特別な気がしてならない。
また風が吹いて髪を揺らす。
その風に、柳生が気を取られているような気がして悔しい。
風にまで嫉妬してしまう。
今目の前にいるのは自分なのだから自分を見てほしい。

「柳生も、一緒に昼寝せん?」

少しでも柳生の気を引きたくて、少しでも柳生と一緒に居たくて、そんな提案をする。

「え?ですが、本を…」

やはり突然の提案に戸惑っているのか、わたわたとしている。

「本を外で読むのもたまにはいいじゃろ?」

「はい…、そうですね。」

もう一押し、とかけた言葉が効いたのか柳生はコクリと頷く。
そんな柳生に窓を乗り越えるように指示してから元の木の根本の日影まで歩き、二人ならんで腰を下ろす。

「風、きもちええじゃろ?」

「はい、そうですね…」

仁王の問いに、柳生は頷きながら答えた。
そんな二人の髪を風が揺らす。


こうしているだけで幸せだ。
柳生と一緒にいられるだけで。


チラリと柳生の方をみればぱらぱらと本のページをめくっている。
そんな柳生を隣に感じつつ仁王は目を閉じた。
友達でも、恋人でも、柳生と一緒にいられる事実に変わりはない。


好きじゃ、愛しとうよ、柳生。


いつかその言葉を柳生に伝えたい。
それからも、ずっとこうして柳生の隣でのんびりと昼寝をしたい。
例え恋人という関係になれなくても、柳生の隣にいるのが自分でないのは許せない。

どうか、柳生のとなりにいるのがずっと自分でありますように。

そんな事を言っても君は、いつものように笑ってくれるだろうか?



(せめて夢でもええんじゃ…)
(仁王くん、何か言いましたか?)
(え?いや、なんも)
(でも今確かに…)
(柳生、本…読まんの?)


―――――――――――

やっと完成!
仁王Sideです!

'10.11.23

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あきゅろす。
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