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ずっと君の隣に(2→←8:Side柳生)
風に揺れる銀色はとても美しくて、見とれてしまう。
校則違反です。
その一言を言えないでいるのは彼にその色が1番似合っていると感じているから。
その彼は、今日も綺麗な銀色の髪をそよそよと風になびかせて木の影で昼寝をしている。
それをただ、図書室の窓からみている事しか出来ない自分の度胸の無さがどうしようもなく嫌になる。
相手は、いつも自分をからかって遊ぶダブルスの相方兼親友だと言うのに、なんだか自分から近付いてはいけないような気がしてならない。


仁王くん…。


心の中でそっと彼の名前を呼ぶ。
届く訳も無いのに、そうせずにはいられない。
もうどうしようも無い。
好きで好きで仕方ないのだ。
だがきっと仁王には彼女もいるだろうし、自分なんて恋愛対象外だ。
だから、せめて親友と言う立場で、なるべく近くで仁王を見ていたい。
辛いが、それでも向こうが自分を認識してくれているだけでも嬉しい事だ。
彼に片想いをしている女性はたくさんいるだろうが仁王に存在を認識されている女性はなかなかいない。
なら、自分は勝ち組だ。
なんて、馬鹿な事を考えてしまう。
ただ自分を安心させるためだけにそう言い聞かせる。
しばらくそうして仁王を見ていると目を覚まし、のびを一つした。
今日は、目を覚ますのが少し早い。
そんな事を考えながら相変わらず見つめているとこっちに気が付いたらしく、立ち上がり近付いてきた。

トクン、と自分の鼓動が少し速くなる。

こちらまできた仁王はコンコン、と図書室の窓を叩き開けるように促した。
かけられた鍵を開け、さらに窓を開ける。
カラカラカラ、と心地のいい音を立てて開いた窓。

「柳生」

いつものように自分を呼ぶ仁王の声。
さぁぁっと風が吹いて仁王の髪を揺らす。
すごく綺麗で、好きだ。

「柳生も、一緒に昼寝せん?」

「え?ですが、本を…」

突然の誘いに戸惑った。
遠くで見ているだけで十分なのに。

「本を外で読むのもたまにはいいじゃろ?」

「はい…、そうですね。」

ニイっと笑う仁王にそう答えるしかなくて。
さらには今すぐ、窓を乗り越えろという命令。
渋々それに従い、制服が汚れないように慎重に窓から外にでた。
それから二人でならんで木の影に座る。

「風、きもちええじゃろ?」

「はい、そうですね…」

そよそよと吹く風が仁王の髪を揺らし、柳生の髪も揺らす。


なんだ、すごく幸せじゃないか。
これだけで、もう、十分だ。


ぱらぱらぱら、本のページをめくり、少し目を通してみるが全く内容が頭に入って来ない。
この類の小説は好きなはずなのに。
パタン、
静かに本を閉じて仁王に習い、柳生も目を閉じる。
とても心地良くて、全てどうでもよくなった。
友達だの、恋人だの、関係無しにただ。
ただ今仁王の隣にいるのは自分で、その事実は変わり無い。


好きです、仁王くん。


いつかその言葉が言える日がくるだろうか。
その言葉で自分の気持ちを告げた後も、ずっとこうして仁王の隣にいられるだろうか。
不安で不安で仕方ない。
恋人としてで無くても、それでもいいから。
せめて、ずっと、貴方の隣にいるのは私であって欲しい。


ずっと、君の隣にいられますように。


そう願っても、君は怒らないで笑ってくれますか?





(柳生、本…読まんの?)
(ええ、私も少し眠ろうと思います。)
(珍しい事もあるんじゃのぅ…)
(ふふ。あまりにも心地がよくて。)
(そりゃ、ええことじゃ。)


―――――――――――――


爽やか…にならない。


'10.8.2

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