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白い日(28/微えろ)
部活が終わり、部員達が帰った部室で着替えを済ませ、柳生と仁王は向き合う。

「な、なんですか…?」
「なにって…今日はホワイトデーじゃろ?」
「そう、ですね。」
「ん、」

ずいっと突き出された左手は掌を上に、なにかをよこせと言っているようだ。
こんな光景を前にも見た気がする。
確か…一ヶ月前くらいに。

「無いですよ、何も。」

一ヶ月前と同じ言葉を、眼鏡を触りながら返す。

「はあ!?一ヶ月前、俺は柳生さんにバレンタインの贈り物を渡したんじゃよ?お返しするのが紳士ってもんじゃろ!」
「なんでですか!あれは貴方が無理矢理押し付けたんでしょう!?そ、それに…無理矢理奪われた感じでしたがあげたじゃないですか…。」
「うーん…まぁ、中途半端やったけどなぁ。」

納得いかないと言った様子で頷いた仁王は何かを思い付いたようにあ、と声を零した。
それからニヤリと嫌な笑顔を浮かべ、柳生の耳元に口を近付け呟くように言う。

「じゃあ、お返しせんといかんのぅ。」

嫌な予感から背筋に寒気が走る。
なにも出来ずに固まっていると唇を塞がれ思わず後退するが腰を引き寄せられキスはさらに深くなる。

「ん、ふ…、んん、っ」

なんとか逃げようと必死になるが離してもらえそうに無い。
どうして仁王に敵わないのか。
身長も自分の方が高いのにいつも仁王に押さえ付けられると逃げられない。
彼のどこにこんな力があるのだろうか。
テニスをやっているのだし鍛えているだろうがそれは柳生だって同じだ。
何か特別なトレーニングでも…

「…柳生」
「ん、なん…ですか」

唇が開放されたが仁王との距離は近く、吐息が感じられる程。

「集中したらどうじゃ?別の事考えとったじゃろ、今。」
「そ、そんな…ん、んぁ、ふっ、ぅ」

何故分かったのか。
また考えを巡らせようとした思考は仁王の手と舌によって遮られる。
再び強引にくちづけられ、片手で器用にシャツボタンのを外されたかと思えばすぐに手が潜り込んで来た。

「ん、はっ、むぅ…」

首筋を撫で、鎖骨をなぞり下に下りた仁王の指が胸の突起を掠める。
それだけでビクリと跳ねた身体。
その反応を見た仁王は今度はそこを抓る。

「ふっ、ぁんん!?」

思わず漏れた声は仁王の唇によりくぐもった。

「んぅ、んん、むっ…ふ、はぁっ…仁王くんやめ…」
「なん?気持ちよくないん?」
「あ、ぅ…こんな、の、あっ!…お返しに、なってな…っ、」

途切れ途切れになんとか言ってからぎゅうっと仁王のシャツを間接が白くなる程に握り唇を噛み締める。
声が我慢出来ない。
勝手に零れ落ちて行ってしまう。

「ふ、くぅ…にお、くん…っ!」

快感に流されかける身体をなんとか理性で繋ぎ止め、ほとんど力の入らなくなった腕を突っ張り仁王を剥がそうとあがく。
その時、バァン!と勢いよく部室の扉が開いた。

「仁王!?柳生…!?」

そこに立っていたのは立海テニス部副部長の真田。

「た、たるんどるっ!!」
「さ、真田くんっ!?」
「チッ…いいとこじゃったんに…」

こちらを見ながら叫んだ真田の顔は柳生以上に真っ赤だ。
事情を目の当たりにしてしまった羞恥か、それとも怒りか。

「お、おま、おまえらなにを…っ!」
「何って…見て分からんのか?」
「に、仁王くんっ!」

いつまでもこのままでいる訳にも行かないと仁王の手を無理矢理剥がし外されたシャツのボタンをとめ、服を整える。

「バレンタインデーは幸村、ホワイトデーは真田に邪魔されるんか!?真田なんて気にせずに続けるぞ、柳生。」
「馬鹿な事を言わないでくださいますか?真田くんが固まっているうちに帰りますよ。」

たるんどるーっ!と騒ぎ出す前に退散しなければ面倒な事になる、と柳生はそう言いたいのだ。
鞄を持った二人は真田の横を通り部室を出る。
しばらく離れた所で真田のたるんどるーっ!と叫ぶ声が聞こえたような気がしなくもない。

「そろそろ帰りましょう」

後ろを歩く仁王の手を取り、ゆっくりと歩き出す。
一瞬、驚いたように息を呑んだ仁王だが次の瞬間には柳生の手を握り返してくる。


「ハッピーホワイトデーです、仁王くん」


並んで歩く二人の影は右と左の手で繋がり長く伸びた。




―――――――――――

無理矢理終わらせた感が否めないですね!

'10.3.15

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