バレンタインキッス(28/ギャグ、微えろ) 部活が終わり、部員達が帰った部室で着替えを済ませ、柳生と仁王は向き合う。 「な、なんですか…?」 「なにって…今日はバレンタインじゃろ?」 「そう、ですね。」 「ん、」 ずいっと突き出された左手は掌を上に、なにかをよこせと言っているようだ。 最初訳のわからなかった柳生は頭の上に?を浮かべるばかりだったがしばらく考えてから思い付く。 バレンタイン…そういう事か。 「無いですよ、何も。」 「はあ!?普通チョコの一つや二つ用意しておくとこじゃろ!?」 「なんでですか!私も貴方も男でしょう!?それに学校にお菓子はよくないです。」 「……そうか、柳生はチョコ、もらいたかったんやの。そんならほれ、これやるぜよ。」 ぽいっと乱暴に手の中に飛び込んで来たのは一枚のCD。 「……あの、仁王くん、これは…?」 そのCDを裏返してみたり、隅々まで確認しながら仁王に尋ねる。 「俺のバレキス。絶賛発売中じゃ!」 「発売中…?貴方、中学生ですよね?何やってるんですか…?」 「その目はなんじゃ、やぁーぎゅ。お前さんだってミニアルバムなんぞ出しとるやないけ。」 さらりと得意げに言って見せた仁王を怪しむような目で見ればそう返され反論できなくなってしまう。 「ま、とにかく俺からのバレンタインチョコはそれってことで。」 「せっかくなのでもらっておきます…。」 どうせ返しても無理矢理受け取らされるだろうと諦め、大人しくそれを自分の鞄の中へと突っ込む。 ついでに部室のベンチに置きっぱなしだったタオルや飲み物も鞄の中へ。 「ひーろーしー」 「な、……なんですか…」 ぎゅっ、と背後から抱きしめられ、嫌な予感に背筋に寒気が走る。 「バレンタインなんじゃ、俺に何もくれないってのは無し。」 「でも何も持ってないですし…」 「なーんか忘れとらんか、比呂士さんよぅ。お前には身体という最高のプレゼントが」 「な、何馬鹿なこと言ってるんですかっ!仁王くんの変態!!」 「うぅ…!?」 仁王におもいっきり肘を打ち出す。 柳生の肘鉄砲をモロにくらった仁王は腹を抱えてうずくまり唸り声を上げた。 「貴方が悪いんですからね…。」 仁王の方を振り返りもせずにそう言った柳生は鞄の口を閉じる。 「そっちがその気なら力ずくでもヤってやるナリ」 「ふぁ!?」 いつの間に近付いて来たのか仁王の手が服を捲くりあげ、するりと背中をなぞった。 「仁王くん!止めて下さい!」 「嫌じゃ。」 「わ、わわっ、うぁ…あ」 執拗に背中を愛撫する仁王の手に柳生はだんだんと艶を帯びた声を漏らし始める。 「う、やぁ…仁王くん止めて…っ」 「こんな感じてんのに?」 「ひぁ…っ!」 前に回って来た仁王の手がいきなりズボンの上から柳生のそれを掴み、強く握る。 「にお、くんっ!、っ」 「なん?」 「やめ、て…って、あぁ、ふ、ぁっ」 ベルトを外され下着の中に侵入してきた仁王の手がすでに余裕を無くした柳生をさらに追い詰める。 その時、ガチャリと部室のドアが開いた。 「柳生…?仁王…?」 そこに立っていたのは立海テニス部部長の幸村。 「何、ヤってるんだい?」 「ゆゆゆゆ…幸村君っ!?」 「ゆ、幸村…!?」 にっこりと笑う幸村の後ろには見えるハズのない黒いオーラがくっきりと見える。 「ああ、バレンタインデーだもんね。そんな事もしたくなる。でもさ、俺が真田に拒まれて部室で頭冷やそうと思ったところで、はまずいと思わない?」 「そ、そうじゃのう!じゃあ俺らはこれで!」 「ちょ、仁王くんっ」 ぐいっと腕を引っ張られよろけながら立ち上がった柳生は仁王に抱き留められそのまま幸村の横を通り過ぎようとした。 が、それは叶わなかった。 「え?何?逃げるの、仁王。」 幸村の言葉にビクリと肩を震わせ停止。 機嫌の悪い幸村を怒らせたらそれこそ生きては帰れない。 「や、あははは…柳生、行くぜよ!」 ぐっ、と仁王に更に腕を引っ張られながら柳生は幸村の脇をさっと通り抜け、部室の入口をくぐり外へ出る。 「ホントうちの部長は…」 なんとか逃げて出れた事に安心しながら仁王が呟いた。 「に、仁王くんっ!鞄がまだ部室に!」 そんな仁王の服の裾をぐいぐいと引っ張りながら言う。 今取りに戻るのは自殺行為だ。 「……諦めんしゃい。」 「そんなっ」 「大丈夫じゃ、俺のバレキスならまだ何枚かある。ほれ、受け取れ!」 「いや、も、いりませんっ!!」 バレキスのCDをまた柳生の手の中へ放り込みたたたっと仁王は軽く走り出した。 「ハッピーバレンタインデー、やぁーぎゅ!」 それをおいかけながら柳生は小さく微笑み、すこし幸せな気分になった。 ―――――――― いろいろとヤケです(笑) '10.2.15 ▼'10.2.17 追記 今更立海の部室にベンチが無い事に気が付いてしまいました… [*前へ][次へ#] |