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確かめる(28)
今日最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、ぞろぞろとカバンを持った生徒が教室を出て家路につく。
しかし柳生は帰るそぶりも見せず、机に向かい本を開いてそれを読み始めた。

「柳生、帰らないのか?」

「真田君!はい、どうしても続きが気になってしまって…」

同じクラスでテニス部副部長の真田に話し掛けられ軽く本を上げながら柳生は言った。
なかなか無い部活が休みの日を遊ばずに読書をしてすごすなんて、とでも思ったのか真田は少し驚きながらも感心した様子で小さく頷いた。

「真田君はなにか予定でも?」

「ああ、幸村と買い物にな。」

柳生の問いかけに嬉しそうな顔で答えた真田。

「デートですか?」

「なっ…!ち、違う!!」

真田の慌てた様子に柳生はクスクスと笑いながら教室の入口に目をやればそこにはテニス部部長の幸村がいた。
いつもの笑顔でこちらを伺っている。

「真田君!」

まだ、デートなどではない!と必死に弁解していた真田の制服の裾をくいっ、と引っ張り幸村の方を指差す。

「楽しんで来て下さいね、デート。」

「だからデートでは無いと言っているだろう…っ!?」

「ほら、幸村君が待ってますよ?」

「あ、ああ。柳生も暗くならないうちに帰れよ。」

「はい!また明日。」

真田が出て行った教室に柳生は一人になる。
静かな教室で黙々と本を読み進める柳生。

「やぁーぎゅっ!」

「うわっ!?」

いきなり後ろから抱き着かれビクリと肩を震わせた柳生は驚き、本を床に落としてしまう。
バサリと落ちた本はパラパラとページがめくれ、柳生の読んでいたページが分からなくなってしまった。

「あっ、」

慌てて拾おうとする柳生だが仁王に腕を掴まれそれは叶わなかった。
仁王を見れば張り付いたような笑顔で笑っている。

「におう、くん?」

「さっき、真田と楽しそうに何話してたんじゃ?」

「えっと…デートの話しです。」

少し考えてから答えた。
確か真田と幸村がデートをするとかそうでないとかそんな話しだった気がする。

「デート…?」

「はい。」

「……柳生、お前…俺というものがありながらっ!」

「え?あ?に、仁王くんっ!?な、何か勘違いして…っん、」

がばりと肩を掴まれ、仁王と向かい合う形になったかと思えば強引に唇を重ねられる。

「んむ、んんっ!」

きゅっと口を結び、舌の侵入を防ぎつつ必死に仁王を引き離す。
なんとか離れた仁王は不機嫌そうな顔でこちらを見る。

「だっ、誰か来たらどうするんですかっ!」

「お前悪いんじゃろ?真田と…」

「だからそれは勘違いですって!デートと言うのは真田君と幸村君の事――――んっ!?」

仁王の勘違いを解こうと説明するがそれは再び仁王の唇によって飲み込まれてしまった。

「ん、にお…ふぁ、んぅ、は…におう、くんっ…!違うんですって!真田君と幸村君の事で…っ!!」

ぐっと腕を突っ張り仁王と距離を取り一気に言う。

「そういう事じゃなか。俺はお前と真田が楽しそうに話してたのが気に入らないんじゃ…!」

「え、」

すっ、とのびた仁王の腕が柳生を包み込む。

「すまんのぅ…。信じてるつもりなんじゃが…不安でな。」

すこし震えるの声で言った仁王の背中に柳生も腕を回した。

「仁王君は、私の1番です。」

だから安心して下さい、とでも言いたげに仁王の背中をぽんぽんと叩く。

「柳生…っ、大好きじゃ」

「私もです。」

ちゅ、と軽く触れ合うだけのキスをもう一度だけして仁王と柳生はお互いの額をつけて近い距離で見つめ合う。

「眼鏡、じゃまやのぅ」

「そうですか?」

「まぁ、眼鏡も含めて柳生が大好きだけど。」

「ありがとうございます。」

にこっと笑った柳生の顔に頬を赤らめた仁王はそれがバレるのを恐れて静かに柳生から離れて窓の外へ視線を外した。
そこには綺麗なオレンジ。

「わあ…オレンジが綺麗、ですね…」

仁王につられるようにして外を見た柳生も同じ事を思ったらしくそう呟く。

「そうじゃのぅ…。」

仁王は夕日を浴びてオレンジ色に輝く柳生を見た。
その眩しさにすっと目を細める。

お前の方がよっぽど綺麗だ、なんて臭い台詞は言えないけど、


「愛しとうよ、比呂士」


柳生の顔が赤くなった気がした。
夕日のせいか、それとも。




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100越えのお題挑戦に挫折しました

'10.11.29

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あきゅろす。
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