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信じる(88)
静まり帰った部室で二人、壁に寄り掛かり、本を開いて並んだ柳と柳生。
「いよいよ明日ですね」
「ああ、そうだな」
視線は本に落としたまま柳生がそういうと、柳も本から視線を外さずに短く答えた。
それからまたしばしの沈黙。
パタン、
本を閉じたのは柳だ。
その音に柳生も本を閉じて柳の方を見る。
柳は何か考えているのか正面より少し上をじっと見つめて動かない。
「柳くん?どうかされました?」
「明日、か…」
ボソリと呟いた柳は左手で隣に立つ柳生の右手をそっと掴んだ。
「…柳くんは、不安ですか?」
「ああ、多少は。」
「それは…意外ですね。貴方は不安など全く感じていないものだとばかり思っていました。」
くすりと小さく笑いながら言った柳生も柳の手を握り返す。
「俺も普通の人間だぞ?不安はたくさんある。」
「そうですか、少し安心しました。私だけではなかったんですね。」
ぎゅっと握った手に力を込めて口元を緩ませた柳生は一歩、横にズレて柳に近付く。
「ああ…、きっとみんな不安に思っているハズだ。」
「仁王くんも、切原くんも、丸井くんも…ですか?」
「ああ…恐らく。」
「柳くんが言うなら間違いないですね。」
くすくすと閉じた本で口元を隠しながら笑う柳生に今度は柳が一歩近付く。
それから柳生を壁に縫い付けてちゅっとキスをした。
本が邪魔して唇には届かないキス。
「きっと、勝てる。俺が言うんだから間違いないだろ?」
「ええ、そうですね…きっと。」
再び二人の影が重なる。
今度は本の邪魔はない。


貴方達を信じて、私は精一杯の応援を。





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100超えのお題挑戦に挫折しました

'11.?.?

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あきゅろす。
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