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ちいさなケーキとたくさんのロウソク
12月に入り、寒さに磨きがかかってきた今日この頃。
正一は今日もいつもと変わらず、ヘッドフォンでガンガンに音楽を聞きながらパソコンの前に張り付いていた。
その後ろ姿をじっと見つめる人影が一つ。
カラカラと口の中の飴を転がしながら不満そうだ。
ずっとここで待っているのだ。
時間にすると、一時間弱。
重い物を持った左手が痛い。

「正一」

試しにもう何度目かも分からないが名前を呼んでみる。
反応は無しだ。
ついに痺れを切らしたスパナは左手に持っていたそれを乱暴に、しかし崩れないよう丁寧に、正一の前に置く。

「うわ?えっ、スパナ?」

やっと気がついた正一が驚いたような声をあげ、ヘッドフォンを頭から外して音楽を止めた。

「こ、これは…何……」

「ケーキだ。」

「ケーキ、だね。」

「ん。」

ケーキなのは分かっている。
正一が聞きたかったのは何故ケーキなのか、だ。
突然ケーキを目の前に差し出されても訳が分からない。

「疲れた脳には糖分が1番って教えてくれたのは正一だ。」

「あ、ああ…確かにそうだけど……ホールケーキはちょっとやり過ぎじゃないかい?」

「いいんだ。今日は特別な日だから。」

正一がこちらを見上げながら首を傾げる。
何の事か、分かっていない様子だ。
しょうがないな…、とスパナがガサガサ、ツナギのポケットを漁る。
そこから出て来たのは大量のロウソク。
それを一本ずつ丁寧にケーキへとさしていく。
全部で、24本。
割と小さ目だったホールケーキは大量のロウソクで埋まっている。

「今日は、正一の誕生日だろ?」

スパナはマッチでロウソクに火を点しながら嬉しそうに言う。
当の本人、正一よりもよっぽど嬉しそうだ。
そこでやっと自分の誕生日を思い出した正一はニコリとスパナに笑いかける。

「そうだったね…忘れてた。ありがとう。」


ぎゅうっ


スパナ腕を抱き寄せ、額をくっつけた。


ありがとう、嬉しいよ、大好きだ。


全てがしっかりと伝わるように。


「ああ、ウチも大好きだ。ほら、正一…ロウソクの火消して。」



今年も正一にとって幸せな一年でありますように。



(す、スパナ…これ大火事だよ…)
(やっぱ24本のロウソクは多かったな)
(き、消えるかなぁ…)
(頑張って消せ、正一)



―――――――――――

おたおめ!正一!
Ver.スパナ。
スパナは正一が幸せになれるんなら隣に自分がいなくてもそれでいいと考えてるんじゃないかと思います…!
でも、正ちゃんが幸せなとき自分が隣にいられたらすごく嬉しいとかも思ってるハズ!
おたおめVer.白蘭と対になってるんでよければそちらもどぞ!

'10.12.3

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