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とある毒舌家の話
ジェイと毒舌家
木の上を音も立てず走るジェイ。出来るだけ気配を殺して、向かうは敵地。少しでも情報を手に入れるためである。

「ん?あれは・・・」

その時、ジェイは一人の少年を見つける。六助だ。ジェイは六助の姿を認めると、その場で様子を伺う事にした。

−−−ヴァーツラフ軍特殊裏工作戦闘員、闇封(あんぷう)の六助

殆ど表に出て来ない人物でヴァーツラフ軍では有名である。前にも何度か潜入したことのあるジェイは、一度六助の姿を見ていたので知っていた。

六助はぼんやりと地面に咲くたんぽぽを見つめていた。すぅっと目を細めて、何かを想うように。何を考えているのだろうか、とジェイが思考する。限りなく少ない六助の情報では、考えても思い浮かばない。ハァと溜息を吐きたいのをこらえて、ジェイはもう一度六助を見遣った。


















「・・・もうすぐ、もうすぐですからね」

















もうすぐ?何がだろうか?

「待っていて下さい、“    ”」

小さく小さく六助が何かを呟く。風が吹き上手く聞き取れなかった。ジェイはその場から去っていく六助を見詰め、それから踵を返した。そろそろ敵に感づかれる頃だと思ったからだ。

行きと同じように木の上を走る。脳裏に浮かぶのは先程の出来事。

「なんて、」

なんて、悲しい瞳をしてるんだろう。

理由もわからないまま、ジェイはそう思った。











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