とある毒舌家の話 セネルと毒舌家 真夜中。交代で見張り番をしていたウィルとセネル。ふぁと欠伸をしたセネルは、ぼんやりと夜空を見上げた。 今はウィルが寝ていて、確かもうすぐで交代のはず。ちょっと疲れたなぁ、とセネルは呟いた。 その時である。 「見つけました」 「っ誰だ!」 「それぐらい自分で考えたらどうですか?」 気配もなく暗闇から現れたのは六助。闇に溶け込むように六助は黒服に身を包んでいた。一気に警戒しだすセネルに、六助は遠慮なく苦無を投げる。 「くっ」 ギリギリでそれを交わすセネル。無理矢理一気に間合いを詰め、拳を腹に入れた。 「っ!?」 入れた、はずなのだ。 しかし六助はうめき声も出さず、何事もなかったかのようにセネルに向かって忍刀を振りかざす。それを必死に交わしながら、セネルは考えていた。 −−−確かに、手応えはあった。あったのに、効いていない?うめき声もあげなかった。技が効かない?それとも・・・ 痛みを、感じない? 「オレとの戦闘中に考え事とは・・・余裕ですね」 「!!」 一気に詰められる間合い。目の前には忍刀。もうだめだ、とセネルは強く目をつぶった。 「アイシクル!」 「!」 間一髪。汗をかきながら現れたウィルによってセネルは救われる。二対一。六助はそれを見て僅かに眉間にシワを寄せる。そしてハァと溜息を吐くと、サッと闇の中に消えた。 「・・・っ」 無くなった気配に安心して、セネルはその場に座り込む。どっと溢れた冷汗に、セネルは恐怖していたのか、と理解した。 「何なんだあいつ・・・」 なんて、冷たい目をしてるんだろう。 ● [*前へ][次へ#] |