いちごみるく(丸井)
「のど渇いたー」
自販機の前で、ポケットから小銭を取り出す。
「いち、に、さん……」
十円玉が四枚。ついでに一円玉が三枚。
自販機には80円という表示。
「……金、ねぇー!!」
頭を抱えてしゃがみ込む丸井。
「のど渇いたのど渇いたのど渇いた……」
まるで呪文を唱えているように、ぶつぶつと呟いている。
正直、かなり怪しい。
「のど渇いたのど渇いたのど渇いた……」
チャリンチャリン、ピッ、ガコン。
自販機の動く音が聞こえ、丸井は顔を上げた。
「え?」
黒髪の、綺麗な女生徒が屈んで、丸井にパックジュースを差し出している。
『のど、渇いてるんでしょ?』
女生徒は丸井が受け取ったのを見ると、ふわりと微笑んだ。
トクン、心臓が静かに鳴る。
いちごみるく
(ジュース一本で恋に堕ちた俺)(だけど、安っぽい感情じゃない)
[次へ#]
無料HPエムペ!