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捧げもの
明さま、絹さまへ(カカシ夢)


「何してるの?」


そう問えば、ヤツは「なーんでもないよ」と空気を歪めた。

背中が小さい。
いらいらとむかむかで喉がいがつく。鬱陶しい。
風が脅かす木々のざわつきが私の身体を包み込んで揺らしては撫でた。
唇の震えが振動をまとう。


ヤツの背中はひどく笑えた。





「今回の忍務失敗はあんたのせいなんかじゃないのよ」
「……よく言うよ。お前が俺を一番責めているくせに」
「反論しないわ」
「しないのかよ」
「事実だもの」
「……あ、っそ」


背後から突き刺している私の殺気なんて蚊に刺されるよりも軽いとでも言いたいのか、ヤツは微動だにしない。
こちらを振り返る仕草一つ見せずに、慰霊碑がヤツの視界を支配していた。


むかつく。

過去に囚われて止まないヤツことはたけカカシも。
ヤツの親友でありながら部外者という立ち位置以上を許されない私自身も。


過去は変わらないのよ。
あんたの目をもってしても。
私の力をもってしても。
過去だけは不変。


いつまでそうしているつもりなの。
いつまでそうして立ち止まったままでいるつもりなの。



「……カカシ」


今までかけらも反応を表に出さなかった親友の耳が器用にぴくりと動いたのは、この空気に耐えられなくなったからなのか、慰霊碑を眺めるのに飽きたがらなのか満足したのか、それとも、通常より幾分頼りない私の声色のせいなのか。



「私、役立たずよ。非力で無力でなんの力にもなってあげれない。カカシが辛いとき悲しいときに、私は背中をさすることもできないわ」
「お前の場合、できたとしてもやらないだろ」
「やらないよ」


当たり前のように即答すれば、帰ってくるものはなにもなくて、代わりに溜め息が空気を染めた。


「私は何もしないよ」


何もできないから、じゃない。


「何もしないで、ここにいるよ」


することが許されないから、じゃないの。



「あんたの三歩後ろに立って、ずっとあんたの背中を見ててあげる」



私は傍観者で、あんたの親友。



「あんたが立ち上がって歩き出すまで」



何があんたにとって最善なのか。



「不格好でも無様でもどれだけ愚鈍でも」




何をすればいいのか、これでもちゃんとわかっているの。




「ここで待っていてあげる」




親友をなめないでよ。




「……まいったなぁ」


ガシガシと頭を掻くヤツは、先ほどよりは少しばかり明るい調子を取り戻して立ち上がった。それでもこちらを振り返ることはなく歩き出す気配も微塵もなく、しかしはたけカカシの背中は私の何倍も広く大きかった。




「それじゃあ俺、動かないわけにはいかないでしょーよ」





ああそう言い忘れてたけどきだよ
(背中はさすれなくても、押すことができるわ)



――――――――

あとがき


そんなわけで、拙いものではありますが、受験でお忙しい明さま、毎日隣で鬱陶しい絹たんに捧げます。

あれ、頼まれてたのってヒナタだっけ?ま、いいやヒナタはお正月に!



もうなんかそんな感じ。
日和  拝

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あきゅろす。
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