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捧げもの
ぁみ☆様へ(ちびトラ夢)


何よりも君は、あの人に嫌われる事を恐れるのだね。





沈黙を遮る騒音も今日はただの子供だった。






午前7時37分。
大事な会議を3時間後に控えた私は、カプセルコーポレーションカプセル開発部デスクワーク内容資料及びプレゼン作成他、カプセル内部に粒子として埋め込む道具の選出リストの見直しを急いでいた。

でももう多分どんなに頑張っても無理。私の目充血どころの話じゃないもん無理。ってゆうか疲れたから無理。寝たい。安眠したい。いやもうむしろ眠れるなら永眠してもいいいやもう永眠したい。


あ、なんか向こうでヤムチャさんが手振ってる……。おーい。うふふ、ヤムチャさんいつ見てもかっこいいなぁ。


なんて意識を飛ばしかけたところで、私を現実に引き戻す悪魔の歌声が家の至る所にとどろいた。


ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンと、それはまるで取り立て屋のごとく。


「うるっせー!」


パンっ!と今見直したばかりの諸書類を乱暴に積み重ねて、いまだに鳴り止まない諸悪の根源へと足を進める。
近づくにつれて酷くなる音に、頭が痛くなってきた。


のぞき穴から見えた紫色の髪の毛に溜め息を吐いて、ふつふつと芽生える憤りと殺意に口角がひくつく。

一体どんな教育をしたらこんなはた迷惑なクソ餓鬼が育つんだ。


「……今何時かわかる?トランクスくん」
「時計持ってねえ」
「家で見てこい今すぐ」
「ねー疲れたー。ジュースだせよ」
「おい聞いてたかクソ餓鬼。ちなみに今は7時半だ」
「正確には7時39分だけどな」
「……」


このクソ餓鬼が!


イラッと、一瞬髪の毛が逆立つ。もちろん気分だけだ。



「何しに、来たのかな?おばちゃんちょっと忙しくて構ってあげられないんだけどー」
「遊びにきた」


遊びにきたじゃねぇよ!
忙しいんだよ!
大切な、私の今後を左右するであろう大事な会議が3時間後に控えてんだよ!
お守りなんてしてる場合じゃないの!勘弁して!


トランクスくんを家に招き入れたが最後、資料の壊滅は避けては通れないだろう。
それだけはなんとしても阻止したい。

トランクスくんが社長の子供でさえなければ、とっとと追い返すのに!(悟天くんはいい子だからそんな事しないけど)


私の物凄く迷惑だといった顔を理解したのか、トランクスくんはぎゅっと私の服の裾を引いてぼそりと呟いた。


「……静かに、してるから」


それは、普段の自信満々が鬱陶しいほどのトランクスくんからは想像できないほど弱々しく、か細く、頼りない声色で、初めて彼を、まだ小さな子供なのだと認識させたられた。



「何かあったの?」


そうして頭に手を置き、あやすように優しく聞けば、トランクスくんは下唇を噛みながら震える声を絞り出した。



「ママが、……大事にしてたネックレス、こっ……こわしちゃ」


たと、涙ぐむトランクスくんをからかう気にはなれなくて、なぜだか今まで彼を追い返そうとしていた自分が急に恥ずかしくなった。



「メロンソーダあるよ。寄ってく?」


知らない内に紡がれた言葉に、トランクスくんの頭に手を乗せ慰めるのに必死な声色に、内心驚きながら私は屈んで彼と視線を合わせた。



「私も一緒に謝ってあげるから」


だから泣かないの。男の子でしょ。


冗談めかしにそう言えば、トランクスくんは「泣いてなんかねぇやい!」と目頭を乱暴に擦って家の中へと無遠慮に踏み込んで行った。


冷凍庫に入っていたアイスクリームを発見され、メロンソーダがフロートに進化したことによって、トランクスくんのテンションはぐんぐんと上がり、もう社長のネックレスなんてどうでも良さそうだ。


「そんでズルいんだぜー悟天てば!舞空術は使わないって約束したのに使っちゃうんだもんよ」
「ぶ……なに?」


全く意味が分からなかったので適当に頷きながら、椅子に座って足をぶらぶらさせるトランクスくんの話を聞いてると、ヴーヴーとバイヴ音をたてテーブルの上の携帯電話が移動していた。


メールかと思ったら意外と長かったので多分電話なんだろう。

こんな朝っぱらから誰だと携帯電話を開いて、死にたい気分になったのは生まれて初めてだった。


ディスプレイに映る『社長』の二文字に、私ははた迷惑なクソ餓鬼、トランクスくんが来る前に行っていた作業を思い出したのだ。


「っ!」

時計を確認。

時刻は8時17分。


いける。死に物狂いになればなんとかいける。

震える手で通話ボタンを押して電話に出れば、およそ予想はしていたけれどやっぱり社長の怒鳴り声から始まった。



『名前ちゃん!?ちょっとアンタ今どこで何してんの!?会議始まっちゃうわよ!』
「え、だって会議11時からじゃあ……」
『何言ってんの!9時からに変更するからって昨日電話したでしょ!』
「あ……」



そういえば昨日社長と電話した気がする。


『8時半までに来なきゃクビだからね!』
「あ!ちょっ待っ」


意見も許されず一方的に通話を切られた。


「……………………うそん」


おいおいまじかよちょっと待ってよまじすかすいませんちょっとタイムタイム。



資料はもうあと見直しだけだから間に合うけど、会社までどんなに飛ばしても20分はかかるぞ無理です。


「あ゛ー、終わった……。私の人生三回くらい終わった……」
「おい、置いてくぜ」
「は」



テーブルで溶けかけていた私にカバンを投げつけて、トランクスくんはそこに立っていた。

どこへ?なんて聞く間も与えず、彼は物凄い力で私を外へと引っ張り出す。
どこにそんな力があるんだと目をむいた。


「俺が乗せてってやるから」



……は?




乗せるって、何が。

いや何に?


飛行機なら持ってますけど。



「ってうあっ!……っ!?ああああああああああ、っああああああああああ!」


ふっと襲われた浮遊感に目の前が真っ白になる。



わ、私飛んで




「ぎゃあああああああ!!タイム!タイムマシン!無理マジ無理ああああああああああうおうおおっうげええええ!」
「……うるせぇ」


隣で毒づくトランクスくんに気を使う暇などなく、落ちないことに必死でもうなんかいろいろそれどころじゃなかった。





その後私が会議に出られる状態じゃなくなったのは、もはや言うまでもない。



アイスクリームにけてえたい



――――――――――


あとがき



お待たせしました、ぁみ☆様。なんつて。

ちびトランクス夢、になってるかなこれ。

でもさ、確かになんでも書くよとは言ったけどまさかホントにジャンル外注文されるとは思ってなかったからね、ぁみ☆ちゃん。


いやいいんですけども。



舞空術で空を飛びたい今日この頃。




では、何かあったら言っておくれぁみ☆ちゃん。



2010 08 09 月 日和

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あきゅろす。
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