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少女の誓い
#4
 ビュッという風切り音と共に、レイラの頭上に真っ直ぐと男の振り下ろした剣が迫る。
 それをすんでのところ、本能でレイラは身を引いた。ハラハラと、数本斬られた前髪が眼前に舞う。
 大地をえぐった剣を横目に、レイラはサッと数歩後退った。
「ちょっと!髪は女の子の命なのよっ!?」
「ハッ!知ったこっちゃねえな!!」
 髭面の男は鼻息荒く息巻きながら、無造作に剣を構え直すと再度の突撃を始めた。
 それを確認するとレイラは、膝までの白いスカートの下に右手を伸ばし、そしてスッと右腕を斜めに振り上げた。
 男はそんなレイラの行動には何も感心を示さずに、間合いからそのままにまたも剣を頭上から、真っ直ぐに振り下ろすところだった。
 そして響く耳の奥に突き刺さるような鋭い金属音。
 男は肉を斬るそれとは違う手応えに驚きの表情を隠しきれていない。
 それもそのはず、ギリと奥歯を噛み締め男の力に必死で抵抗するレイラのその手には、三十センチにも満たない小刀が握られていて、逆手に持ったそれで男の剣を受け止めていたのだ。
「……悪かったわね思惑通りにいかなくて」
「……っく!」
 未だ冷静になれていない男は気付きもしないが、ニヤリと笑みを作ったレイラの顔は若干引き攣り、尚も押し付けられる力に耐えるのがやっとであった。
 と、パッと身を引いたのは髭面の男。力ばかりで生きてきたこの男は、予想外の事態が起こると動揺し、事を進ませられないのだ。
 レイラはふっと一息つき、小刀を逆手に握ったままやや構えを低くする。冷や汗が出るのも否めない。
 この小刀、レイラの右腿に鞘が括られており、スカートでその存在を隠しているのだが、下向きに括っている為多少細工が施されている。
 その為一歩間違えればその刀身を引き抜けず、今頃は息も絶え絶えだったかもしれなかった。
 レイラは対峙する男を見遣り、改めて安堵した。
「諦めなさいっ!今のでわかったでしょう?私は剣術も使えるの、そして魔法もあるんだから!観念して大人しく捕まりなさいっ!」
 どう見ても精一杯の強がり、ハッタリもいいところだったが、髭面の男には効果があった。

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