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少女の誓い
#2
「何ニヤニヤしてんのよ気持ち悪いっ」
 少女は吐き捨てるように悪態をつくと、腰に手をあて心底嫌そうな顔をした。
 その少女の態度に髭面の男は気分を害したようで、眉根をピクっと動かす。しかし何かを思い付いたように、またも顔面をニタァーっと歪めた。少女が「うぇー」という顔をする。
「お嬢ちゃんこんなところで何してるのかなぁ?」
 んん?と猫撫で声で今更な事を聞き、気持ち悪い顔つきをする男を、少女は気持ち辟易として見つめた。
「……ホント気持ち悪っ……何あれ……」
 相手に聞こえないように呟き、更に「盗賊って皆あんなんなのかしら」と付け加えた。
 が、髭面の男はやたらと耳がよかったらしく、今度こそ怒りに触れたらしい。
「人が下手に出てりゃいい気になりやがってこのガキが!!」
 唾を飛ばし飛ばし、肩を揺らして吠える髭面の男に、しかし少女はしれっと、半ばきょとんとした顔で呟く。
「誰も頼んでないのに」
「この……ぶち殺してやるっ!!」
 よほど気が短いこの男に、どうやら少女の対応は些かよろしくなかったようで、髭面の男はさっと帯剣した剣を引き抜くと少女に向かって駆け出した。
 しかし少女は幾らも怯むことはせず、むしろさも楽しそうに口元を綻ばした。
「ふふんっ。やっぱそうこなくっちゃねっ」
 そして少女はボソボソとルーンを詠唱し始めた。深緑の瞳が色を濃くし、少女の体を見えないオーラとも呼べる魔力がうねる。
 真っ直ぐに突っ込んできていた髭面の男は、まさか少女の体をうねる魔力に気付いた訳ではあるまいが、ボソボソと何かを呟くその姿で気付いたのだろう、ザッと土煙をあげて立ち止まった。
「……魔法だと……?」
 髭面の男の顔には僅かに焦りの色が伺える。魔法の力は遥か昔より弱まり、確実に魔法を使える者の絶対数が少ないからである。国に遣える魔法使いならいざ知らず、こんな年端もいかぬ少女には使えるはずもないようなものだ。

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あきゅろす。
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