少女の誓い
#1
悠々と街道を闊歩する一人の少女がいた。綺麗な黒髪に深緑の瞳。黒髪とは対称的な真っ白な服に真っ白なスカート。そしてまるで猫のようなその顔で鼻歌さえ歌っている。
端から見ればまるでそれは、お使いを終えた少女がうきうきと帰路についている最中にも見えなくはない。
誰も彼女が今から野盗のアジトに乗り込もうとしている、などとは夢にも思わないだろう。
つと少女は何かに気付き足を止めた。
右にそれる街道から外れた先に山があり、深い森が広がっている。
少女はそして迷う事なくその山の方へと歩き出した。
「うーん。どうして悪党って決まってこう、山とか森の中にアジトがあるのかしらねえ」
うんざりとした愚痴を零しつつ、パキパキと小枝を踏み鳴らしながら少女は奥へと進んでいく。悪党が堂々と城を構えるはずもないのだが、少女の愚痴にはさも不思議そうな意が込められていた。
そして大して高くはない山の中腹に、少女の目指すそれはあった。
一見ただの民家のように見えるが、こんな場所に一軒だけ構えるこの家はそれだけで十分怪しいものに見える。
少女は森の陰から一度それを確認すると、迷うことなくその家に向かい出した。
しかし、
「おい誰だ!!」
家からではなく、横の方からかけられた怒声に少女は眉根を寄せ、声のした方へと振り向いた。
そこには少女に駆け寄ってくる一人の男の姿。遠くからでもわかるがたいのいい、髭面の男だった。きっと野盗の一味だろう。
「おい小娘!そこで何してやがるっ!」
「止まりなさいっ!」
唾を飛ばし飛ばし叫び、少女に近寄ろうとする男を、しかし少女は右手を上げてそれを制した。その少女の気迫に負け、男は踏み出した足をピタリと止めた。
「ははーん。さては貴方ここにいる盗賊の一人ね?」
少女はしたり顔で男の顔を見た。
男は一瞬ギクリとした表情をしたが、すぐにその顔をニヤついたものにした。相手が少女だということを思い出したのだろう。
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