[携帯モード] [URL送信]

 

その帳の向う側の桜色の宝玉に、私は心を奪われてしまったのかもしれない。


「まるで嫁入り行列のような一行ですね」


少しずつ、遠ざかる一行を目で追いながら、ぽつり、とこぼした趙雲の声に、諸葛亮はため息をこぼした。


「もしも本当に嫁入りならば、もっと華々しい雰囲気で見送って差し上げるのですが。・・・まさか、仙女どのを魏に差し出すことになるとは」


訳あって降り立った仙女姫を、魏に送る一行。

輿に乗る姫君の可憐な姿。今までありがとうございましたと深く礼をする姿が蘇る。

脅し、だった。

彼女を差し出さねば蜀の地を踏み荒らすという、魏の狡猾な。蜀の都合で魏に送られることに一切の不満を漏らさず、微笑むその優しさ。


「・・・うまく、いけばいいのですが」

「諸葛亮殿?」

「いずれ、わかります」




「敵襲だ―――ッ!!」


叫ぶ声、馬の嘶き。

がたん、と激しく輿は揺れて、振り落とされそうになって慌ててしがみつく。


『敵・・・?曹魏が襲ってきたなんて、まさか』


今から魏に送られる自分を魏自身が襲うことはない。利はない。
今ほど蜀から送り出されたのに、蜀が襲うこともきっとない。それならば出る前のはず。

残る可能性は・・・呉か、賊か。

いずれにしても、むざむざ蹂躙されてやる道理はない。




[次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!