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その帳の向う側の桜色の宝玉に、私は心を奪われてしまったのかもしれない。
「まるで嫁入り行列のような一行ですね」
少しずつ、遠ざかる一行を目で追いながら、ぽつり、とこぼした趙雲の声に、諸葛亮はため息をこぼした。
「もしも本当に嫁入りならば、もっと華々しい雰囲気で見送って差し上げるのですが。・・・まさか、仙女どのを魏に差し出すことになるとは」
訳あって降り立った仙女姫を、魏に送る一行。
輿に乗る姫君の可憐な姿。今までありがとうございましたと深く礼をする姿が蘇る。
脅し、だった。
彼女を差し出さねば蜀の地を踏み荒らすという、魏の狡猾な。蜀の都合で魏に送られることに一切の不満を漏らさず、微笑むその優しさ。
「・・・うまく、いけばいいのですが」
「諸葛亮殿?」
「いずれ、わかります」
「敵襲だ―――ッ!!」
叫ぶ声、馬の嘶き。
がたん、と激しく輿は揺れて、振り落とされそうになって慌ててしがみつく。
『敵・・・?曹魏が襲ってきたなんて、まさか』
今から魏に送られる自分を魏自身が襲うことはない。利はない。
今ほど蜀から送り出されたのに、蜀が襲うこともきっとない。それならば出る前のはず。
残る可能性は・・・呉か、賊か。
いずれにしても、むざむざ蹂躙されてやる道理はない。
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