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「きゃああっ」
進行方向とは逆方向の廊下から、女性の悲鳴があがる。
女官の悲鳴だろうか。
何事だろうか。
思い浮かんだ疑問を胸に、抱えた書簡は左手に抱え、雷は肩越しに振り返る。軽い足音がする。
「やりぃっ!4人目!」
「昭っ!!」
なんだ、子どもか。二人の少年が、ばたばたと廊下を駆けてくる。元気のよいことだ。
だが。
「あれっ」
ひょい、と足元に突っ込んでくる茶色の髪の少年を避ける。
少年の手は、本日は女人服を着ていた雷の下衣を撫ぜ、ふわりと広げる。
「下衣捲りとは・・・色ごとを覚えるにはやや早いと思いますが」
聞いたことがある。
最近、とあるご子息が戯れに女人の下衣をめくるいたずらをしている、と。この悪ガキか。
むきになって、雷の下衣を追いかける茶髪の少年の手を、ひらひらとかわしているとやや遅れて黒髪の少年が追いついてきた。
「昭!またおまえは・・・!いいかげんにしないか!むきになってそんな下らぬモノをみたって目の保養にもどうにもなかろう!!」
でたな、悪ガキその二。
辛らつな言葉遣いで可愛くないどころか、下手をすれば大人さえ言い負かすという。
「・・・少々おいでなさい」
ため息をついて、雷は二人のこどもの返事を待たず、書簡を小脇に抱えると、少年たちの襟首を掴んだ。
*****
「わたくしは雷天羽。貴殿らのお名前は?」
雷は自室に少年たちを放り込むと、とりあえず抱えていた書簡を片付けた。
「おれ?おれは子上。あにうえは子元」
あっさり応えた子上に、ちょっと恨めしげな顔をして、子元は黙る。
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