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「・・・あれは、」


鍛錬も終わり、夕暮れのことである。

さく、と土を踏む音が足元に響いたような気がした。

視線の先には、厩と馬と、そして馬を世話する華奢な人影。


「・・・麗華、殿」


誰かから借りたのだろうか、動きやすい質素な男物の服に華奢な身を包み、長い髪を高くまとめ、せっせと馬の世話にいそしんでいる。

馬超が見ていることにはちっとも気づかずに、馬の飲み水を変え終えたようだ。


『おいしいお水ですよ。今日も一日お疲れ様でした』


やわらかく微笑んで、馬の頬を撫でる。その手つきはいたく優しい。

そしてその撫でた馬は、絶影・・・馬超の愛馬だ。
主に似たのか似たもの同士なのか。主同様気難しくひとを寄せ付けぬところのある馬であるのに、ちっとも嫌がらず、むしろその手に頬を摺り寄せていた。


『ふふ、絶影さんは相変わらず優しくて綺麗ですね。かわいい・・・でもちょっと待っててくださいね、お部屋のお掃除しちゃいますから』


人語を解すかのように、甘えるように鼻先を彼女に近づけ、そして絶影はおとなしくなった。

くすりと笑って、麗華は壁に立てかけてある先割れの道具に手を伸ばした。


「仙女殿が馬糞掃除か?」


思わず声をかけてしまった馬超は、自分自身に驚く。
けれども突然声をかけられた麗華だって驚いたらしい。


『馬超様!?』

「そう驚くこともなかろう。俺は俺の馬の世話をしにきたのだ。・・・まさか主である俺より先に俺の馬の世話をしているものがいるとは思わなかったが」



 

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あきゅろす。
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