1
「わたくしを将とお迎えになる、そうおっしゃるのですか」
くつくつ、とその人は曹操を見据えながら喉の奥で笑った。
その人は、主である姫君を守るため、捕縛を受けた。
ただひとり、要塞に残り姫君を逃がし、返り血を浴びたその人に、捕縛を受けるならば姫君の追撃を中止すると脅して。
その人は、白皙のかんばせの、それはそれは美しい若武者のたたずまいであった。
が、捕らえたときに目にした四肢の細さに驚き、またその人が男ではなく女であると知ったとき、曹操は驚いたものである。
「・・・結構。5か条の条件をお許しいただけるなら、お受けしましょう」
今、縄を振り払い、兵を振り払い、目の前の男の首を取る。彼女にとってできなくはないことだった。けれど。
その後、姫様は? 胸にひっかかりを覚える。・・・ならば。
「ひとつ、わたくしの心は差し上げられぬ」
ざわり、と居並ぶ曹操の臣下たちがざわめいた。
納得のできぬことはせぬ。民をむやみに殺すこともせぬ。
「2つ、わたくしの忠誠も差し上げられぬ」
曹操の口元がゆがめられる。
あくまでも、主はかの姫だということか、と。
[次へ#]
無料HPエムペ!