平行線の世界の上で


※ROAD TO NINJAのネタバレを含みます
※上記設定とアニメのROAD TO SAKURAネタ
※時系列は映画本編と違います











「私は…あなたの知ってるサクラじゃないわ」




どんくさい小娘はとうとう頭までイカれたのかと思ってしまうであろうその痛々しい台詞。
だが、その言葉を聞いてすべての違和感がすんなりと消えていった。





平行線の世界の上で





オレの立場上、加えて奴の立場上、もうソイツから避けて生活できないのだと悟ったのはしばらく前だった。
木の葉に関わると何故かいつも縁がある、もはや、腐れ縁でそして…
そんな小娘の反応に違和感を感じたのは、先日の九尾関連の出来事で対面した時だった。

「またお前か…」と鼻で笑い、挨拶代わりの悪態をつく。
奴から返って来るであろうお決まりになった嫌悪の表情を想像し反応を窺った。
しかし、予想に反して返ってきたものは驚愕、畏怖の表情だった。



「な…んで……」



小さく聞こえた声色には恐怖。

今までだってそんなことはなかった。
アイツは、オレにそんな反応をしたことがなかった。
初めて会った時から、オレを知っるようになってからも…


(どういうことだ?)


そんな感覚は初めてでそれ以降は任務に集中した。
小娘には何も言えなかった。




あれからアイツとは会ってはいない。












任務で滞在中の木の葉を何気なく散策していると、見覚えのある人影を見かけ無意識に足を止めた。
人気のない夜の公園は閑散としており、一般論で考えても、この時間に人がいるのは不審に思うであろう。



(サクラ?なにやってるんだ?)



そして、勿論その一般にオレも含まれていた。
足音を潜めて近寄り、ベンチへ腰掛ける後姿を注意深く見やると様子が可笑しい。




「お前…!!なんで泣いてんだよ!?」


「!?サソリ!?」




一瞬小娘は、先日の様な緊張感を放ったが、何か思いとどまったように緊張を解いた。
慌てて目元を擦り、「なんでもない、なんでもないから」と繰り返し訴えた。



「てゆーか、なんで此処にいるのよ…」


「偶々だ…オレ等が今木の葉にいるのは知ってんだろ?」


「あっそ…!泣き顔見られるとか最悪だわ」




悪態をつきながらも瞳から溢れ出る涙は止まる所か増えているように思えた。
明らかにただ事ではなさそうだ。




「……………何か、あったのか?」


「……違うの、本当に…何もないの…ただ…」




言葉を句切ると立ち上がり夜空を見上げて話続けた。




「お父さんとお母さんは英雄で、
ナルトの両親はご健在だし、サスケくんはチャラいけど木の葉にいて、
カカシ先生は熱血過ぎて駄目駄目だし、いのが気弱でヒナタは気が強いし…」


「他の同期もいつもと違った個性があって面白いし、暁は世界の平和のために里と協力して戦ってる」


「……」


「そして…今、こんな風に私はサソリと話して、サソリは私を心配してくれてる」


「小娘…」


「こんな選択肢も…こんな世界もあったのね…」


「……お前、やっぱり最近変じゃないか?」




彼女は真っ直ぐにオレを見据えた。
曇りのない力強い瞳はいつも通りの彼女と何ら変わらなかった。




「私は…あなたの知ってるサクラじゃないわ」




泣いて少し赤くなった瞳から、一筋だけ雫が流れた。
それが綺麗で、魅入ってしまった。

けれど言葉の意味はちゃんと頭の中に納まって、理解していた。
オレの知るサクラではないという言葉を理解していた。


違和感が消えて、納得はしていた。
でも、オレの知るサクラは?
目の前に居るのだって"サクラ"には変わらない。
"サクラ"は"サクラ"じゃないのか?


オレは、小娘を抱きしめていた。




「……サソリって、温かかったんだね…私、知らなかったわ」


「あたりまえだろ、バカ野朗」


「もし……もし…アンタが暁じゃなかったら…」


「てめーとはこうやって会うこともなかっただろうな」


「そうね…」




腕の中でサクラはこう呟いた。

『サソリが暁じゃなかったら良かったのに……』

罪を懺悔するかのような、か細い声だった。














次に小娘に会った時には、以前のサクラに戻っていた。
相も変わらずドンくさい女だった。
あの時の事はやはり、何も知らないらしい。


違和感の無くなった日常は、違和感が有った時となんら変わらなかった。


あのサクラとソイツの知るオレは、どんな関係だったのだろうか…

目の前で楽しげに笑うサクラと一緒にいるオレを見た時、一体その2人はどんな反応をするのであろうか。

オレに最早知る術は無い。



あの涙は…

別のオレは、彼女を悲しませる存在なのだろうか。



だとしたら、オレはその世界を…





『サソリが暁じゃなかったら、こんな風に私達は話せてたのかな?』




彼女の世界は一体どんなところなのだろうか。



End.


月読の世界だろうがパラレルワールドだろうがあんなにも自分(サクラちゃん)にとって印象的だった敵を目の前にして反応しないはずがない!
ってことで、サソサク好きとして妄想した産物。


あきゅろす。
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