CRY FOR THE MOON5







最初なんて知らない、始まりなんてわからない…










―CRY FOR THE MOON―

















最近はずっと雨が続いていた、季節の影響ではない…
だってこの世界にはとうの昔に季節が消えてしまったからだ…。

だから天気なんてしょっちゅう変わるもので、それを異常気象と呼ばなくなったのはもう大昔の話だった…





「サソリの奴今日もこなかったな…」


「ああ…」


「もう休んで一週間は経つな…うん」





彼らが居るのは学校の屋上、

飛段はフェンスを掴みグランドの後ろに広がる街を
イタチはフェンスに背を向け雨の止むことのない空を
デイダラはフェンスよしかかりコンクリートの地面を

各々が灰色の世界を見つめていた…


傘なんて差してる訳でもないので灰色の世界から降り注ぐ雨に打たれ濡れていた。





「旦那ってさ…普段から無表情だったけど…人形何かじゃねーよな?」


「サソリはたまにちゃんと笑うだろ…人形なんかじゃねーよ…」


「嗚呼…それにアイツは頭も良い、考えあっての事だろう…」





ポツリポツリと会話が続く、内容は全て一人の人物の事で、確かめるように、言い聞かせるかのようだった…

その中でも雨は止むことなく体を冷やす。




「なぁ…オレ思うンだけどよぉ、やっぱりアイツの話に乗って見に行って見ねーか?」


「オイラも…やっぱ気になる…うん」


「…そうしてみるか…?」




会話に上がった"アイツ"―――三代目が

「一度サソリの仕事を見てみるか?興味が湧いたらオレに連絡すればいい…但し、他言無用だ」

とサソリの家で告げられ、連絡先を渡された。



サソリの家で見たもの、聞いたものがあったがやはり友達は友達に代わりはない、サソリが心配だ。






「そうと決まれば早速行動っとぉ…」


「あぁッ!!!先輩たちこんなとこでサボって!しかもズブ濡れじゃないっすかぁ!?」




急にそんな声が耳に入り屋上への入口へ目を向ける。



「トビかよ…脅かすんじゃねェ」


「サボってる言うならお前もだろ…うん」


「なーに言っちゃってるんすかデイダラ先輩!!もうとっくに休み時間っすよ!
これだから先輩は…」


「あ゙ぁ!?何だとトビ!?」




一人の登場にぎゃあぎゃあと騒がしく音が木霊した。


































「サソリさん」


「何?」


「今日の夕食どうしますか?」


「じゃあいつものヤツで」





この満面の笑みは、これを望む主のため、






「本当にサソリさんはそれが好きなのね」


「うん!大好き」








この喋り方も皆全部、これを望む主のため…








全てはこの世界と同じ偽りで、
だけどそれに人々は幸福を見い出している。


可笑しな世の中だ…


こんな茶番な人形劇でしか幸せを掴めないでいるなんて…







でもその茶番な喜劇でマリオネットとして演じている自分が一番可笑しいのかもしれない。











――此レガキットオレノ運命




間違って何かいやしないさ…。


絶対に…





























先程まで居た家を出る、今日のオレの仕事は終わったのだ…



視線を上げれば其処に三代目と車があった…
















「久しぶりだな…アンタが迎えに来るなんて」


「たまには良いだろ?」


「フン………、何考えてやがる?」


「別に…ただお前学校行ってないだろう?単位落としたら留年だぞ?」


「……アレ見られたら行ける訳ねーだろ?」





サソリは助手席で窓の外を見ながら不機嫌そうに答えていた。
車が夜の街を進む、窓ガラスには外の街灯が映っては素早く消えて行く。





「へぇ…」


「…なんだよ?」


「別に」


「………」




初めて会った時から三代目には何か勝てないような気がしている。
それは錯覚かもしれないし、本当の事かもしれない…





「サソリ…」


「だからなんだよ…!?」










「やんなくたって良いんだぞ…この"仕事"」


「何を今更…」




三代目はいつも突発的なことが多い…
それ故何を考えているかたまに理解できなかった。




―――オレハ人形…演ジル中デシカ生キラレナイ

















「じゃあ何でオレを買ったんだよ?暇つぶしの"人形"が必要だったんだろ?」





ニヤリと笑って質問をする。
この質問は昔からオレから三代目にするもので答えもいつも同じだ

「嗚呼…そうだ」

これがいつもの決まり文句。




だからオレはその言葉を黙って待つ…












































「嗚呼…最初はな」


「??」



いつもと違う答えだった…



















そして車はオレンジ色の街灯の光を反射しながら闇を進む。






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