CRY FOR THE MOON







『助けて…?』






―CRY FOR THE MOON―
無イモノネダリ

















オレは昔から人形として生きた


だがかといって自我が無かったわけではない





ただ他人に求められるままに、

ただ他人が望むままに、

ただ他人に必要とされるままに、







己ヲ演ジ


時ニハ幸福ヲ


時ニハ狂気ヲ


人々ニ与エ生キテ来タ








それも、その全ては金次第…



それは欲望にまみれた汚い金。
赤く穢れた薄っぺらい金。











オレには親なんて存在しない…
否、知らないと言った方が正しいか。






ふとこの生活に疑問を抱いた時には、もうこの仕事をしていたのだから…





―――ソシテオレニハ"持チ主"ガ居タ














この仕事

―――金持ちの道楽かつ闇




初めて仕事をした時のことなんて、
実際のとこ憶えてなんかいなかった

―――それだけ自分は幼かった




それを今まで、ずっと続けてきた

―――需要があるし




人形であることは苦でわない

―――金にもなる








なによりそれが…

"自分自身"だったから









だから、だから今のオレが存在するンだ…

































「……はい………はい…わかりました。では、9時にソチラへ向かいます……えぇ、それではまた…」




手にしている携帯電話からはツーツーと規則的に音が流れ出ている。
それが脱力した手と共にスルりと下へと流れ、指先をすり抜け落ちて行き、タイル貼りの床とぶつかり音をたてた。





「あっ!!ちょ、旦那!!!携帯壊れちゃうだろ!!うん」


「…ぁ、嗚呼」


「嗚呼、じゃねーだろ!?…たく、全く毎回毎回何考えてやがんだよ…」





そのようなやり取りを交わしながら、金髪の男は少し慌てながら携帯電話を拾い上げた。





「その電話…仕事か?」


「ああ…」





金髪の男が拾い上げた携帯電話を持ち主である赤髪の男に手渡した。
赤髪の男は窓のさんに腰掛け、じっと外を見つめている。

外は曇り空だった。





「…なぁ、サソリの旦那」


「なんだ?」


「旦那ってさ、、オイラに隠し事多いよな…」


「…そうか?」





相変わらず外を見続け、反応の薄い相手に苛ついたのかもう一人は声を荒げた。





「だってそうだろ!!オイラ達、友達だろ!?何でなんも言ってくれねぇんだ?」


「別に何も聞かれなかったからな…」


「だから…だからって何も言ってくれねーのか?
もう…オイラ旦那が心配なんだよ」


「………わりぃ、デイダラ。オレ今日もう学校抜けるわ…」





そう言いながら窓から離れ金髪の男――デイダラの横を通り過ぎようとした時、

赤髪の男―――サソリの腕を掴んだ。





「待てよ旦那…」


「…放せ」


「なぁ…仕事ってなんなんだよ?ただのバイトじゃないだろ??普通のバイトならそんなに金回り良いはずな…」






デイダラが言葉を途中で切った…
その理由は目の前のサソリにあった。

何故なら突然、デイダラの顎に手を伸ばし口付けたからだった。






「ッ…な、なにしやがんだッッ!!」


「これがオレの……仕事だ」






顎から手を放し言い放ったその言葉。
艶やかな笑みと目を見開き怒る相手を残し、振り向きもせずに教室を後にした。



その笑みは引き込まれそうなぐらい妖艶で

対照的に背中が凍りつく程危険なものだった。




























「………雨か…」




廊下の窓から外を見上げると曇り空は泣いていた…











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