優雅さに囚われた/鼬と桜











一人で廊下にいるとさっきふとみつけたソレ。

漆黒のしなやかな髪が揺れた。



その髪を見ていると彼を思い出す。




似ているのは当たり前、だって兄弟なんだもの。














「サクラじゃないか…」






「イタチさん久し振りですね」












嬉しくて笑顔になる表情には嘘、偽りはない。



学年が変わってからクラスが遠くなってしまってこの広い学校では中々会えない。













「同じ歳なのに敬語はやめろって前から言ってあるだろ…」






「アハハ、何かイタチさんって大人っぽくて敬語で喋りたくなるって言うか…」










苦笑いを浮かべて話す彼は

落ち着いていて、優しくて、その上頭も良く何でも出来て、どことなく不思議な人だ。









サスケ君の双子のお兄さん。









顔は似ていても、全く違う雰囲気で何故かドキドキする















「サスケが留学してしばらく経ったな…

サクラ、一つ聞いていいか?」




「はい?」




……?





頭に疑問詞を浮かべてその続きを待った 。













「お前は、まだ…サスケが好きなのか?

…俺を...」















"…恨んでいるだろ?"












最後の言葉は囁くように、自分を嘲笑うかのようだった。













「ぇ…!!」










思いがけない言葉に驚いた。




真っ黒な瞳が時折朱を放ち私の瞳を捕らえる。

とても胸が高鳴った…














「……理由。知っているのだろう?」













"アイツが出て行った…"














知らないと言えば嘘になる。

けれど、知らないとも言える。





彼らの家は由緒正しい"うちは"家で

しかもその本家







それ故に2人の間に亀裂が生じてしまった。









仲の良い兄弟だったのに…





家庭の事情は複雑だ。














「何でイタチさんを恨まなきゃなんないんですか!



……サスケ君は大切な人です。でも…」
















意味のこもった沈黙を残し私は黙った。






イタチさんを見るとフフッと笑みを零した。






私の気持ち…伝わったかしら??












「…安心した。ずっとそれが気がかりだった…」











『おーい、イタチぃ〜!これから集まりだってよ』














少し離れた所から男の人の声がイタチさんを呼んだ



イタチさんはそれに気づき返事をしていた。











「すまない、サクラ。また今度な…あと、敬語。そろそろ止めてくれよ」














そう私に告げるとしなやかに後ろを向き進みだす…

けれど一歩踏み出して止まってしまった。



そしてまた私と視線を合わせた




















「なら……オレにもチャンスはあるって事だな?」














「な―――!」















「フッ…冗談だ」









”オレが殺されてしまう”















上品な笑顔で笑みを残し去っていく後姿を

ただ呆然と見つめた。





最後の言葉は…なんだったんだろ?

















―――その優雅さに囚われたら…私はどうなる?









嗚呼これも貴方と同じ憧れかしら?







あきゅろす。
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