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GANTZ長編小説
二人
信じたくなかった。部屋に転送されると西しかいなかった。涙が止めどなく流れる。ミッションが始まる前に味わった失恋の比ではない痛みが胸に走る。
玄野は西に懇願するように聞いた。

「皆は?死んだのか!?加藤は…加藤はどうなった!?」

西は冷たい表情でぼそりと呟いた。

「さぁ。オレも足切断されて、動けなかったし。見てない」

玄野はひざまずいた。嫌な予感が去来する。涙も嗚咽も止まらず、思考が上手く働かない中、まるで一つの答えが出たようにガンツから採点の音楽が鳴り響いた。

嘘だろ?

玄野は勢いよく立ち上がり、足が縺れそうになりながらもガンツに近寄った。

「…嘘だ。何で…」

何で採点が始まってるんだろう。これじゃまるで。

「全員死んだんだろ」

西の言葉が玄野を切り裂いた。

玄野は再び、ひざまずいて、砲哮した。だけど、どれだけ泣き喚いても誰も帰って来ない。自分が最後に加藤や岸本に取った態度を考えると吐き気がしそうだった。

玄野が怒りに任せてガンツにXガンを放っても、部屋は静かなままだった。

「…無駄だぜ」

玄野は西の言葉なんて聞いちゃいなかった。自分に向けてXガンを放つ。それでも自分の頭が吹っ飛ぶ事はなかった。

「…こんなの…」

玄野はボロボロになりながらガンツの玉に寄りかかった。

「こんなのってないだろ…ガンツ」

罰なんだろうか。誰も顧みずに戦ってた事に対しての。いや、そんなはずはない。だったら、罰は自分にのみ返ってくるはずだ。どうして加藤が、岸本が、北条が、他の奴等が。
加藤が千手観音を倒しに行って来ると、告げて去って行った後ろ姿を思い出す。


結局、何も言えなかった。


会えて良かったと思っていたのだ。岸本の視線を根こそぎ奪っていても、ガタイが良くで勇敢で、自分のコンプレックスを浮き彫りにするような存在だったが、自分を慕ってくれた。


オレの事を覚えていてくれた。


加藤。会いたい。お前が生きるべきだったのに。岸本と一緒に生きるべきだったのに。


玄野が一人で戦わなかったら、二人とも死ななかったかと言えば、そうではない。どっちにしろ、これ以上の生存は難しかっただろう。それでも。


玄野は自分を責めずにはいられなかった。


玄野は嵐が去った後のように静かに泣いた。玄野の泣き声は部屋を満たし、空気を振動させ、溶けていった。
その後悔と悲観の渦にいる途中で。


玄野は西に押し倒されていた。


玄野は身体が動かなかった。身近な人間のあまりにも凄惨とも言える死に精神が崩壊しかかっていた。

西が玄野のスーツをひん剥いて、無理矢理身体を開いても、何とも思わず、身体もピクリとも動かない。
ただ、西に身体を貫かれ、激痛が走った時。


もっと傷付けて欲しいと思った。


咎人に罰を与えるように。玄野は自身を痛めつけて欲しかった。それで許されたかった。もちろん、それはエゴでしかなかったが、そんな事を考える余裕など玄野には当然なかった。

玄野は痛みと苦しみと熱さに咳き込みながら、呻きながら、泣きながら、加藤と岸本の名前を呼んだ。
暫くして、肌に貼り付く自分のではない体温と汗と鼓動を感じながら、玄野はおかしいなと思った。もう誰もいないはずなのに。




玄野は独りではなかった。
独りぼっちではなかったのだ。


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あきゅろす。
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