GANTZ小説
今日はオフのつもりだったけど(アキラ→計←西)
「髪切ったんだ?」
玄関の扉を開けた玄野を見て聞いた。しかし、玄野の返事で聞かなきゃ良かったと思った。
「あー、うん、ちょっと。アキラが切ってくれた」
後ろ髪に指を這わせながら玄野は答えた。西は自分の目尻がピクッと痙攣したのがわかった。
(あのブラコンが)
*
勝手に部屋に入って来てから西の様子がおかしい。いや、西がおかしいのはいつもだが。なんたって猫を殺して勃たせる変態なのだから。
(でも、オレがやめろって言ったらやめてくれたもんなぁ。…いや、オレの言葉ぐらいでやめる方が西にしてはおかしいのか?…あれ?わけわかんなくなってきた)
うんうん唸っていると西がオレの漫画を持って、これは?と聞いてきた。
「オレの」
「ホントかよ」
「うるせーな、疑うなら聞くなよ」
オレの言葉に西は盛大な舌打ちをしてガサ入れに戻った。
そう、それはまさに『ガサ入れ』と呼ぶに相応しい。
西は家に上がって、いきなり部屋を見渡した後で洗面所にある二本の歯ブラシに目をやって聞いてきた。
「何で2本あんの?片方誰の?」
「青いのはアキラの」
その返事聞いた後の西の行動はホントに一瞬だった。青の歯ブラシを抜き取って盛大にゴミ箱に叩き入れたのだ。
「はっ?いや…何やってんの」
「明日、オレの歯ブラシ持ってくる」
「いや、そんな事聞いてない」
玄野は呆然としてゴミ箱から覗く、まだあまり使っていない歯ブラシを見ながら聞いたが、西はまともに答えず、もう部屋に入っていた。
それから部屋にあるものを誰のか聞いてくる始末だった。
自分のじゃないというと何故か盛大にゴミ箱投げ入れる。
もう全部自分のであるということにしておいた。
「西くーん…もういいじゃねーか、掃除大変なんだけど」
「これは?」
「無視かコラ」
「そっちこそ無視かコラ」
「…オレのだよ」
「ホントだろうなコラ」
「ホントホント(嘘だけど)」
西はまたガサ入れに戻っていった。
(やっぱわけわかんねーなコイツ…)
そう思いながらトイレに行くため腰を上げた。しかし、トイレのドアノブに手をかけた瞬間、西の手が玄野の手に重なった。いつの間に背後をとったんだと考えて、すぐに答えはわかった。コイツは常にガンツスーツを着用している。
「えー、何?一緒に入りたいの」
「変態かオレは」
「…(まさしくその通りなんだが)」面倒な言い合いになりそうだから口にはせず、どけよと言って前をむいた瞬間、「アンタ首筋白いな」
うなじに熱い痛みが走った。
あまりの衝撃に意識が薄れゆく中、見たのは西のつり上がった口角と口周りについた血だった。
(髪…切るンじゃなかった…か?)
*
西はベッドに座りながら腕の中の玄野を見下ろした。失神している。
(だっせ)
何でこんなことをしたのかわからない、しかし玄野が目を覚ましたら面倒なことになるのは確かだ。何すんだこの変態マジキチパーカー野郎とギャーギャー騒ぎ出すに決まっている。
(でも気持ち良かった…)
そうだ、確かに髪を切ったことによって露になった玄野のうなじを見た瞬間、無意識の内に噛みついていたが、自分の歯形と血が滲んでいるのを見た瞬間、感じたことのない満足感を得た。
しばらく失神した玄野を眺めた後、うなじに口をつけて血を吸ってみた。
(…悪くない)
その時、玄関のドアが開く音がした。部屋のすぐ外に、夕日に照らされた吸血鬼が立っていた。
「…お前何やってんの?オレの兄貴に」
「…誰の兄貴だって?ブラコンはいい加減卒業したら?」
吸血鬼の眼がすっと細くなった。
「…兄貴はずっとオレのもんだ、邪魔するなら殺す」
「奇遇だな、オレも同じことを言おうとしてたんだよ」
(この変態吸血鬼が)
吸血鬼の手の平から刀が現れる。まるで濡れているかのように美しく鋭い刀身だった。
それに反応し西もXガンを構えた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!