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GANTZ小説
出来損ない彼の風景(アキラ)
何が吸血鬼だよ。死神だろアンタ。


アキラは金髪の美しい黒衣の男と相対していた。



オレからしたら簡単に割りきれるアンタらのが信じらんねぇよ。
そりゃ知り合いが殺される場面見ても、全然怖くなかったよ。でもさ、いきなりお前は吸血鬼だ、人間じゃないとか言われても嬉しいわけないだろ。むしろ平気で人間の血ィ飲んだ自分に引いたって。だって普通に気持ち悪いだろ。それとも自覚してから長時間経つとアンタらみたいに平気になるもんなのか。
なんとなくアンタらとつるむようになっても別に居心地が良かったわけじゃない。ヤクザみたいなもんだろ。知ってしまったらからには抜けられない。だから、いつだっけ女子高生達が面白半分にクラブについて来た時もこちら側の片鱗があった子には帰るように促したんだよ。結局アンタに負けて連れてかれちまったけど。


それよりもヘコんだのは兄貴が敵側にいた事だけど。


仲は良くなかった。いや、昔は良かったと思う。男子のリーダーみたいな兄貴に憧れる時期もあった。だけど、オレが兄貴の全てを追い抜くようになって家庭の雰囲気が変わってしまった。オレの親は、いい人ではあったけど、オレにとってはいい親でもあったけど、兄貴にとってはそうではなかった。できない兄とできた弟という構図が親の中で確立されてしまって、それっきり。

それでもオレが兄貴の理解者になれれば、良かったんだと今ならわかる。でも、あの頃のオレは昔のヒーローみたいに逞しくて、強い眼じゃなくなった兄貴にガッカリしていたし、自分の事しか考えられない時期でもあった。
結局、家庭の雰囲気は改善される事もなく兄貴は家を出た。その時初めて、オレがいなかったら兄貴が家を出ることもなかったのかなと思った。なにもかも遅すぎたけど。

でもさ、それでアンタら何て言ったっけ?兄貴が星人と戦う動画をオレに見せて、お前の身内かって確認して来て、それに頷いたオレに。こう言ったんだよな。


「仲が悪いなら別に殺してもいいだろ、種族が違うんだし」


そう言ったんだよな。
そりゃオレだって自分の命が大事だから頷いたさ。でも心の底から納得したと思うか?割りきれると思うか?
だって、この14年間人間として生きてきたんだ。



家族を見捨てられるわけないだろ。



だから、アンタらは化物なんだろ。
オレはやっぱり人間だよ。とてもじゃないが、アンタらとは相容れない。

まぁ、さすがに盗聴の可能性を考えなかったのは舐めてたよな…オレ。

「兄貴の討伐にお前も参加したら、今回の件は不問にしてやるよ」

「…断る」

言ってしまった。これで殺り合うしかなくなった。しかも、兄貴がこの人に敵うとは到底思えない。つまり今、殺すしかない。

少し笑ってしまう。そういえば笑うのも久しぶりだ。


なぁ、兄貴。
結局オレはアンタとも相容れることはなかったけど、あの画面に映ってた兄貴の、昔のヒーローに戻った眼を観れた時、どれだけ嬉しかったか知らないだろ。



願わくばアンタが生き延びて、プラットフォームで一緒にいた女の子とでも幸せになってくれたら、オレも赦された気になるのに。





(やっぱ兄貴じゃ無理かもな)

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あきゅろす。
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