GANTZ小説 夢も現実もあり得ない君へ(エロ:西玄) 栗色の長い髪をなびかせた女性がこちらを向いて微笑んでいる。 美しい人だった。子供の欲目を抜いても綺麗な人だった。自慢の母だった。 西にはこれが夢だとわかっていた。美しい自分の母は、美しく死ねなかった事を嫌という程知っているからだ。でも、夢なら夢でよかった。 「…ママ」 母は変わらず微笑むだけだ。 その微笑みに西は、ある男の事を思い出した。忌々しい男だった。仕事と愛人に溺れて、家庭を顧みず生きる憎い男だった。自分の容姿が似てくる度に、西は頭をかきむしりたい衝動に駆られる程だった。そう、何度あの男の脳髄を弾けさせてやろうかと思ったか知れない。その度に生涯、男の為に生きた最愛の母を思い出し、阻まれるのだ。西は口を開いた。もうずっと、疑問に思っていた事だ。 「ママは…あの男のどこが好きだったの?」 母は何も言わない。 「……オレの」 西の手に力がこもる。西は息苦しさを感じたが、構わず心に縛りついていた疑心を吐き出した。 「オレの顔が…ママを苦しめてたのかな」 オレを見る度に心底愛して、心底憎んだあの男を思い出したんじゃないか。その度にどうにもならない現実にぶつかり、苦しんだんじゃないか。 西は俯く。吐き出したというのに少しも楽にはならなかった。 西は頬に温かさを感じた。あぁ、母の手だ。西は思わず手を重ねて、顔を上げる。そこには変わらず愛を向ける母がいた。 「母さん」 * 西ははっと目を覚ました。しばらく、ぼんやりしていたが、ようやくここが玄野の部屋である事を思い出した。西は隣で眠る玄野を見る。真っ暗な部屋で数分そうしていた。 玄野は相変わらず気持ち良さそうに寝息を立てている。 西はそんな玄野の上に覆い被さった。 抱きしめながら、口付けると玄野が眉を寄せて目を覚ました。構わず、裸の肩に噛みつく。 「いッ!何…!?何だよッ…?」 寝起きの顔で玄野は西を睨み付けるが、西は反応せずひたすらに首筋を舐めたり、噛んだりし出した。 「ちょっ…オイ…さっきヤッたじゃねーか。…あっ…」 玄野が冷たくなった身体がまた熱くならないうちに西を止めようとするのに、西はもう後ろに手をゆっくり挿れてきた。 「あっ…待てって……くぅっ…西っ…」 指を増やして、玄野が抵抗出来ないようにしていく。 西は相変わらず無言で顔を上げずに玄野の身体を愛撫しているので、玄野もいい加減恐くなってきた。玄野が西の顔をわし掴んで視線を合わせる。 「なんかあったのかよ?」 「…ねーよ何も」 (あったのかよ) 玄野は手を離して、抵抗するのをやめた。いつもの覇気がなく、1の言葉に10の憎まれ口を叩くという普段の応酬が出来ないくらい西が弱ってるのを見てとれたからだ。 西が眉を寄せて苦し気に玄野にキスをする。舌を絡めると身体が火照るのを感じた。中の指をバラバラに動かせば、玄野は頭がクラクラして、もうどうでも良くなって来た。 「ひっ…んぅ…あっあっ…んんんっ…に…西…」 西が玄野の前を扱うと玄野はビクッと震えた。 「あぁっ!?待っ…あっあっ…だめだって…あああっ」 玄野がイク寸前で手を離し、西は玄野の脚を持ち上げて自身を突き挿れた。ぐちゅっという音が響いて、玄野が大きく震える。ゆっくり動くとベッドがギシギシとうるさく鳴った。 「あっあっ!…んっ…んん…」 西は熱い息を吐いた。 「玄野…名前呼べよ…」 「…えっ?あっ!あっ…ん、西…西…」 西は動きを緩めず、玄野の前を扱う。 「ぁあッ!にッ西…いッ…あぅッ…あああああッ!!」 「くっ…」 同時に攻められて玄野はのけ反りながらイッた。 西もそんな玄野を見て、中に勢いよく吐き出した。玄野の身体が痙攣する。二人で荒い息を吐いてると西は急に玄野を殺してしまおうかと考えた。 今なら素手で殺せるな。 「西」 西はビクッと震えた。 「…玄野」 「早く抜けよ…」 玄野が少し恥ずかしそうに顔を背けながら、呟く。 「…お前、何でヤらせてくれんの?」 「…はぁ?」 オレのどこが好きなのかとは聞けなかった。さすがに女々しすぎると思ったからだ。 「なんなんだよ、急に」 「いいから答えろよ」 玄野は顔を手で隠しながら、うーと唸りだした。それからボソリと言った。 「顔が良かったから…だ」 「…」 「…あと」 玄野が顔を隠したまま横を向く。 「あと…手と体温も好きだ」 恥ずかしさのあまり寝たふりを開始して、本当に寝てしまう玄野を、西はずっと見ていた。 その顔は夢の母と同じ慈しみに満ちていたことを西は生涯、知ることはなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |