GANTZ小説
彼等は永遠に洞窟の中(西玄)
出会って間もない頃は何故、同類などと思ったかわからなかった。
彼は明らかに自分とは違うようにしか見えないし、女の胸を見て、つい勃起してしまうなどという日和っぷりは自分とはかけ離れている。
しかしあの何を見ても反射しないような深い眼は自分と確かに近いものがあると感じたのだ。そして、その直感は正しかった。
ベッドで寝ている玄野は魘されていた。深い皺が眉間によっていて、西はそれを確認するように反射的に前髪を払っていた。
彼は気づいているだろうか、魘されるのは決まってガンツのミッションが終わった夜だ。
(馬鹿な奴)
彼はガンツに付き合っている限り苦しみ続ける。それなのに100点を取るたびに死人を生き返えらす。西は思う。玄野がどれだけ解放されたいと思っても彼の本質あるいは本能とよべるものは違う、と。
ガンツが彼を人間にしている。戦いこそが彼の本質だ。死人の生を選択しているようにみえるが、西は知っている。
(玄野は戦い続けることを選択してるだけだ)
この事に気づいているのは自分だけだと思う。あの偽善者にはわかろうはずもない。何故なら、この事実こそが彼が自分と同類であるという直感が正しかったことの証明だからだ。
西は安心している。己の本質に気づかない限り、玄野が西の前から消えることはない。
だから、こんな風に戦闘の恐怖に、または良心の呵責に魘されているときは、西はすぐに彼を起こすようにしている。
何故、こんなにも苦しみながらも戦うのかという疑問を彼が拾わないうちに。
(…気づいたら、やめるかもだし)
玄野の頬を叩いた。
「玄野」
玄野はすぐに目を覚ました。こめかみの汗が光っているのが見えた。涙が滲んでいる。西は反射的にその涙を舐めとった。
玄野は寝起きのせいか、ぼーっとしていて西の行動を咎める様子はない。
「…西、か?」
「怖い夢でも見たのかよ」
玄野はちょっとうつむいて、それから壁を見て思い出そうという素振りを見せたが、結局首を振った。
「…わかんねー、思い出せない」
「それでいい」
西は一瞬の間もなく、そう返して玄野をベッドに横たえた。
(お前はこちら側の人間だもの)
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