dream
夏祭り(3) shortの『夏祭り(2)』の続き
『〜後藤×葵の場合〜』
「うわー・・・人いっぱいですね。」
「ん〜・・・ウチらにはキツイねぇ。」
あまり人の多い所を好まない真希と葵は、この人ごみを見て少々困った様にしていた。
しかし久し振りの2人揃ってのオフを逃すことなんて出来ず、デートがてら祭りに足を運んだのだ。
男物の深紅色をした浴衣の葵と、普通に女物の藍色をした浴衣の真希。
てくてく歩きながら出店を眺める。
買い物するよりものんびりと散歩する方が良いらしい。
「後藤さん、喉渇いたりしてませんかー?」
「大丈夫。平気だよー。」
「そうですかー?遠慮なく言ってくださいね?」
「あはは、有難う。やっぱり葵は優しいねぇ。」
「はは、そう言ってもらえると嬉しいです。」
年下の葵は年に似合わず子供っぽいということがなく、下手をすれば先輩である真希たちよりも大人びている。
背も高い為か、その雰囲気的にも知らず知らず頼ってしまうことがある。
先輩としても年上の恋人としてもいいのだろうかと真希は時々思うのだが、葵本人が「甘えるのは性に合わない」というので気にしないことにしたのだった。
「皆さんも来てるんですかね?」
「多分来てるんじゃないかな?よっすぃーは今日デートだって言ってたし。」
「じゃあ会えるかもしれませんね。もうすぐ時間ですし、良い場所探して歩き回ってるでしょうから。」
葵は真希の手を取ってくるりと行き先を変えた。
真希も目的地が分かっているらしく、そのまま付いて行く。
見えてきたのは小さな神社。
普段は少し道を逸れれば見える場所なのだが、こういった祭りなどで出店が並ぶと上手い具合に隠れてしまうのだ。
それに位置的に空が見えるとは思えない場所の為、夏祭りの時は混まない良い場所・・・というよりは貸し切り状態となる。
「ここが一番花火が綺麗に見えるからねぇ。」
「ベストスポットですよね。」
何気に毎年来ている夏祭り。
2人は境内に腰を下ろした。
他には誰も居らず、遠くなった人々の声や祭りの音楽が丁度良かった。
静かに響く虫の音が涼しさを感じさせた。
「・・・・ん?」
「どうしたの葵?」
「誰か来たみたいですね。」
葵の視線の先に、何人かここへ向かってくる人影が見えた。
ぽっかりと林の中に開けたこの場所には、空から月の光が降っている。
その優しい光が人影を照らし出した。
「あれま、よっすぃーに梨華ちゃん。それにまこっちゃんに愛ちゃんじゃん?」
「ガキさんに絵里にさゆにれいなまで。よくここを見つけましたね。」
「「「「ごっちん(後藤さん)?!!」」」」
「「「「葵?!」」」」
どうやら8人は祭りの会場内でばったり会ったらしかった。
大所帯で騒ぎになっても大変なので、人の多い所を避けてきたらここに着いたとのこと。
「良かったねぇ。ここ、ベストスポットなんだ。」
「マジで?良かったぁ〜。ウチらも丁度探してたんだ。」
「他に人来ませんしね。良い場所でしょ?」
「葵も後藤さんも凄いっちゃね。こんな場所知ってるなんて。」
「ホント良かった。もう始まる時間だし、場所見つからなかったらゆっくり見てられなかっただろうから・・・。」
全員が境内に座って空を見上げる。
丁度時間になり、花火の打ち上げが始まった。
色とりどりに染まる夜空を見上げ、その場に居る全員がそれに魅入った。
隣りに座る恋人や仲間と同じ時間(とき)を共有する。
それは素晴らしく、普段忙しさの中に身を置く彼女達にとっては良き安らぎとなった。
「また、皆で一緒に見たいね。」
誰が呟いたのか。
それは皆同じ気持ち。
今度は他のメンバーも連れてこよう。
私達だけが知っている、夏限定の秘密の場所へ―――。
END.?
おまけ↓
『〜中澤×矢口の場合〜』
「ねぇ裕ちゃん、ホントにこっから花火見えるのー?」
「ちゃんと見えるでー。ほら、祭りの会場あそこやろ?こっから見えるんやから大丈夫。」
「ホントだ。へぇ〜、裕ちゃん良い位置の部屋に引っ越したじゃん。」
「たまたまやけどな。うん。毎年夏が楽しくなるわ。」
「あはは。じゃあおいらのこと毎年呼んでよー?」
「あったり前やろ?矢口の為ならいつでも呼んだるわ。」
「ありがと裕ちゃん♪・・・あ、始まった。」
「おー・・・・・結構綺麗やんか。」
「すごーい・・・ねね、裕ちゃん、今度はなっちとかカオりんとか圭ちゃんとか皆呼ぼうよ。」
「せやなー。皆でわいわいしたり、こうやって花火見るのええかもなー。」
「うん!絶対ね?」
「ん、絶対や。」
カコン。
チューハイの缶を合わせ、夜空に咲く大輪に2人で乾杯。
END.
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