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dream
痛覚的愛情表現/後藤ドリ


カーテンの隙間から漏れる朝日が眩しくて!私は目を開けた。

上体を起こし、ぼさぼさの髪を撫で付けながら自分の格好を何となく見てみる。

はた、と。

乱れた自身の服装に固まってしまった。



何時もの男物の白シャツに黒のズボン。

それは良いとしよう。

しかし、何故前が全開なんだろうか・・・?



そんな混乱気味の私の耳に小さな呻き声が聞こえた。

隣りをみればそこには――。





「真希・・・。」





あぁそうか。

昨日の夜は真希が遊びに来て、深夜に一人帰す訳にもいかないからってそのまま・・・。



思い出して赤面する。

自分達は恋人同士な訳だし、久し振りに会えたのもあったしで・・・まぁ、そーゆー事をした訳なのだが。

その時の事を朝から思い出すのは色々良くない事だということを今、再確認した。



ばすっ、と左手っで顔を隠す。

ヤバい熱いハズい!!

真希が起きた時、どんな顔すればいいのか?!



・・・・・・よし。

取り敢えずコーヒーを淹れよう。







キッチンでコーヒーを淹れながら朝食の用意をする。

コーヒーがインスタントなのは仕方が無い。

この前、とは言ってももう一ヶ月半も前だから、我が愛猫がキッチンを荒らしてくれたお陰だ。

ゆっくり買い物に行く時間も無いのでそれからはインスタントを飲む日々。

何に怒っているのか分らないが、未だに機嫌を直してくれず、昨日も腕を引っ掛かれたばかりである。





「何かしたっけかな・・・?」





一口啜り、苦味を楽しむ。

うむうむ、この苦味が堪らないね。



ベッドルームに戻ると真希はシーツに包まったままだった。

差し込んだ朝日が眩しかったのだろう、先程の位置と少しズレている。

眩しいなら起きろよ、とは思うものの、無理させたのが自分だと気付き起こす事はしなかった。





ベッドに腰掛ける。

音はしなかったが私が座った時のベッドの動きが大きかったのだろう。

真希が眉間に皺を寄せながらも目を醒ました。





「・・・葵?」

「あ、ごめん。起こした?」

「んん・・・へーき・・さっき起きたし・・・。」





目を擦りながらごろりとこちらに向きを変える真希。

また寝る気じゃないだろうなと思っていたら、右腕を掴まれた。





「どした?まだ眠いなら・・・。」

「葵、これ・・・何?」

「ん?あぁ、コレか。」





真希が見つけた数本の赤い筋。

右腕に浮かんだそれは、先程気に掛けた愛猫からのプレゼントである。





「チビにね。何に怒ってんだか知らないけど、引っ掛かれた。」

「珍しいねぇ。チビちゃん、大人しいって言ってたじゃん。」

「そーなんだけどね。一ヶ月半くらい前にキッチンも破壊されちゃってさぁ。ほら、初めて真希呼んだ時くらい。それから時々機嫌悪くなるんだ。」

「ふーん・・・。」





興味無さそうにそれだけ言うと真希はうつ伏せの状態で両肘をつき、私の傷をまた眺めだした。

何が楽しいのか暫くそのままでいる。

まぁいいかとコーヒーを啜れば、右腕に生暖かい感触と傷がぴりぴりとした痛みを覚えた。

驚いて真希を見れば、赤い筋状の傷に舌を這わしている。

うっわ、その表情は反則でしょ?

じゃなくって。





「ちょ、真希・・・?」

「・・・痛いんでしょ?」

「そりゃまぁ痛いけど・・・いや舐められるのも痛いって。」

「舐めれば早く治るって言うじゃん?」

「や、そうだけど・・・。」





その顔でやるのは勘弁して欲しい。

何て言うか・・・欲しくなるから。



なんて他の事考えてたのがいけなかったのか。

気付いた時には真希が私の首に腕を回していて。





「―――いっ・・・!!」





鎖骨の辺りに、歯を立てられた。

結構強く噛まれた。

血出してないかなと思う暇も無く、かぱりと歯が外されて、そこもまた舐められる。





「真希・・・何がしたいの?」

「ん―、マーキング。」

「はぁ?」

「葵が、ごとーのものってシルシ。」

「・・・・あぁ、成る程ね。」






真希の噛み付く行為も、愛猫の引っ掻きも。

私に対して“自分のものだ!!”っていう主張みたいなものだったわけね。

痛いけど、ある意味一番わかりやすくて手軽な愛情表現の一つか。





「じゃあさ、真希。」

「ん?」

「私も真希に対してやって良いんだよね?そういう愛情表現。」

「昨日もシてたのに?」

「・・・・それを言うなよ―。」





とは言いつつも、私は既に真希をベッドに押し倒していた。

巻き付けてあったシーツを少しだけ捲り、短いキスをする。

唇を離した後は首筋に顔を埋めて、にやりと笑ってやった。





「私の愛情表現、真希のより痛いと思うよ?」

「いいよ。葵に付けてもらえるんだったらさ。」

「おーおー余裕だね。んじゃ、覚悟して受けてよ?私の愛情表現。」





さて、先ずは何処にシルシ付けようか?










Fin.

感想お待ちしております。


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