海に還った人魚
佐伯Side 08/6/29 UP
西野の考えている事が分からない。
西野も針谷も西本も、自分達がどんな茶番を演じているか、気付いてないのか?
針谷は西野の手作り弁当を食いながら、楽しそうに笑っちゃいるけど、西野の事なんて見ていない。
針谷が見てるのは同じ教室の端で、楽しそうに女友達と弁当を広げている西本だけ。
西本も視界の隅で針谷を見てる。
惹かれ合ってるなら堂々とすれば良いのに。
針谷も西本も本当馬鹿だ。
例えそれが西野の願いだったとしても、お前等が見つめ合ってるその視線を、西野が気付かないとでも思ってるのか?
頼むから、もう西野を傷付けないでくれ。
俺はもうこれ以上、見てられないよ。
西野のそんな笑顔なんて、見たくないんだ。
いっその事、泣けば良いとさえ思う。
そうすれば、きっと楽になれるのに。
西野がその関係を壊せないのなら、俺が壊してやる。
西野がその暗闇から抜け出せないのなら、俺が光になってやるから。
そんな俺の視線に気付いたのか、西野はゆっくり顔を上げて俺を見た。
俺は意を固めて席を立つと、静かに二人に近付く。だけど西野は、そんな俺を制止するように、小さく首を横に振った。
その仕種が『自分は大丈夫だから』と言っているようで、俺はそれ以上動く事が出来なかった。
ただ、そんな西野に
涙が出そうだった。
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