海に還った人魚
美月Side
「……マジ、美月には悪い事したと思ってる……ホント、ゴメン」
「もう、良いよ。駄目になってしまったのは、仕方ないでしょ?」
ハリーは私の手作りのお弁当を食べながら、すまなそうに私を見てる。だから、私は少しでもハリーに余計な心配を掛けたくなくて、いつものように笑って見せた。
あなたが好きだと言ってくれた、飛び切りの笑顔で。
「……卒業式、もうすぐだな」
「早く、私から解放されたい?」
「――べっ、別に、そう言う意味じゃ……ねぇよ」
嘘吐き。
本当は、今すぐにでもはるひの所に飛んで行きたいくせに。
だけど、駄目。
行かせてあげない。
あなた達二人には、卒業式までただの友達でいて貰わなきゃ。
それまでは、形だけでも私達は恋人同士じゃなきゃいけないの。
ふと視線を感じて顔を上げると、佐伯くんが私を見てた。
佐伯くんが何を言いたいのかは分かってる。
だからお願い。
そんな悲しそうな瞳で、私を見ないで。
こちらへ近付こうとする佐伯くんに向かって、私は小さく首を振る。
あと、一ヶ月。
あと一ヶ月で総て終わるの。
それで私は、
自由になれるから
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