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甘党な姉を観察する妹

麗羅と二人で歩いていたら、急に麗羅が立ち止まった。どうしたのか聞こうとして、顔を見たら理由がわかった。

「シュークリーム……」

「食べたいの?」

麗羅は甘党だ。私も辛党の気があるけど、こんなに豹変するほど好きなわけではない。麗羅の場合、本当に普段のクールな感じがなくなるから驚く。

「食べたい」

「買ってく?」

「もちろん!」

こんなに意気揚々とお財布を持って笑顔で走る麗羅を見られるのはこの時くらいだろう。

「三つください」

「三つ?」

「二つは私の。一つは万里の」

「はいはい」

どこぞのるーちゃんくらい扱いやすくなってしまうのだから、困ったものだ。普段と違って女の子全開でこれもまたかわいいけど。

「よし、カスタードと抹茶のを買えたぞ。万里のはキャラメルだ」

「そうなの?」

「そうだ。だからキャラメルも一口ください」

「はいはい」

どうしてこう、食いしん坊になるのだろう。そこもまたかわいいけれど。

シュークリームを頬張りながら幸せそうな顔をしている麗羅。今るーちゃんが目の前を通ったら失神してしまうんじゃないかってくらいにかわいい。

「美味しい?」

「もちろん!」

「そっか。よかったね」

「あっ」

食べながら今度はお団子屋さんを見て固まる麗羅。さすがにこれ以上食べさせるのはよくない気がした。

「万里、お団子ならお土産に持って行けるかな?」

「持って行けるんじゃない?」

「たまには妖宇香ちゃんや月影さんのところにでも行かないか?」

「お、いいじゃん!」

麗羅はまだ二つ目のシュークリームを頬張っている。とりあえず、他の人にも分けるという発想が浮かぶほどテンションが上がっているらしい。

万里もおもしろいことを考えたらしく、ニヤリと笑った。

「今日予約して、持ってくの明日にしない?」

「どうした?」

「私もうお腹いっぱい!」

「そうか」

「ね、明日にしよ!」

「あんまり食べ過ぎてもよくないし、そうするか」

納得したのでホッとする。本当は今日でもよかったんだけど、彼と遭遇させるには明日でなくてはいけないのだ。

「帰ろっ!」

手を差し出すとそっと握り返してきた。ああ、もし私がるーちゃんだったらぶっ倒れてるなぁ。



次の日、お団子屋さんへ取りに行ってから妖宇香ちゃんたちのところへ向かう。

「こんにちは」

「遊びに来たよー!」

出迎えてくれたのは妖宇香ちゃん。この子もいつ見てもかわいいなぁ。

奥にはいつも通りのつっきーと、目を丸くしているるーちゃん。そうそう、これを狙って来たんだよね。

「お待ちしてました。あがってください」

「お土産にお団子を持ってきたんだ」

「まあ!だったら、緑茶がいいですね。座っていてください」

「ありがとう!」

麗羅をるーちゃんの隣に座らせて、私もその隣へ座る。

「なんで今日来たんだ?」

「万里が今日にしようって言ったので。流夏さんもいらっしゃるとは思いませんでした」

「お団子いっぱい買ってきて正解だね!」

麗羅に見えないように、るーちゃんへ向かって眼鏡のジェスチャーをする。そうしたら、なんとなくわかったみたいで嫌そうな顔をした。

「あいつ、には、勝てない、な」

「なんです?」

「なんでも、ない」

つっきーもるーちゃんの様子を見ておかしそうに笑っている。

「つっきー、ちょっと妖宇香ちゃんを手伝いに行こうか」

「ああ。二人は、ここに、いてくれ」

ちょっとわざとらしいかと思ったけど、麗羅はポカンとしている。どうし気付かないのかなぁ。

るーちゃんはちょっと驚いてこちらを見ていた。本当に、るーちゃんはいい人なんだから。

そして、心が強い人。私たちなんかとは違う。這い上がってきた人。

本当はこのかわいい二人を、真剣に応援してもいいと思っている自分もいる。

いつか自分がいなくなっても、麗羅が前を見て行けるように。

でも。

「やっぱりまだ、あげたくないんだよなぁ」

「え?どうしました?」

「ううん。何でもないよ。そろそろ、持って行こうか」

何よりおもしろいからっていうのもあるんだけど。ほら、またるーちゃんは困っている。

「お待たせしました。お団子ですよ」

妖宇香ちゃんが助け船を出す。麗羅はもうお団子に心を奪われていた。

「あ、麗羅。よかったら、俺のを一本」

「隙あり!」

「あっ!」

るーちゃんからみたらし団子を奪った。

「みたらし団子は私にちょうだい!」

るーちゃんは文句を言っている。麗羅も昨日、二つもシュークリームを食べたのだ。そんなに欲しそうでもなかったし。

これくらいは私にちょうだい。まあ、まだまだ麗羅もあげられないけどね。

「美味しい?麗羅」

「うん」

幸せそうに食べる麗羅。この表情をぼんやり見ながら、私もみたらし団子を食べた。

ああ、甘いものも悪くないなぁ。

そんなことを思いながら、私はるーちゃんに食べ終わった棒を投げつけた。





貴重な万里視点のお話になりました。
12800hitのいちさんからのリクエストで、これまた綾刀姉妹の話でした。
この姉妹が人気だと、作者のモチベーションが上がります(^q^)

せっかくいちさんがリクエストしてくれたというのに、こんなに遅くなってしまって申し訳ございません!
また復活したら、いちさんの元へと通いつめる日々が始まると思いますがよろしくお願いいたします(超私信)

二人だけの話になったかは微妙ですが、万里の麗羅大好きっぷりがよく出ているので個人的には気に入っています。
いちさん、リクエストありがとうございました。








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