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シャッターチャンス

「なにしてるの?麗羅」

紗希が後ろから覗きこむ。麗羅は少し驚きつつも、現れた人物が紗希であると確認して安堵した。

「ああ、何でもないよ」

「これは?」

「たまには使おうかなと思って。どうだろう?」

麗羅が持っていたのはデジタルカメラだった。どうやら新品同様らしい。

「いいんじゃないかな?一緒にみんなを撮りに行こうか」

「ああ」

「青幻君も一緒に行こうよ」

ソファーで転がっている青幻に、紗希が声をかけた。すると彼は、すくっと起き上がってこちらへ歩いてきた。

「それ、何の機械なんだ?」

「カメラだよ。わからない?」

「ああ」

しょんぼりしている青幻。麗羅はすかさずシャッターを押した。

「わっ」

「麗羅、今の撮ったの?」

「二人のツーショット、かわいいなと思って」

今撮ったばかりのものを画面で表示する。青幻はそれを見ると、少し嬉しそうにした。

「これでみんなのことを撮りに行こうと思うんだ。行こう、青幻」

「……うん」

麗羅、紗希、青幻はカメラを持って家を飛び出した。



最初に出会ったのは、万里と玲花だった。

「あれー?かわいい三人で何してるの?」

「楽しそうだね、青幻君」

「ああ」

玲花に言われてにっこりした青幻。万里が飛び付く。

「かわいいなぁ、お前は!よーしよしよし!」

「今、みんなの写真を撮って歩いてるんだ」

「へぇ!私と玲花?」

「わーい!ありがとう三人とも」

仲の良さそうな万里と玲花が撮れた。見てるこちらまで微笑ましくなる。

「じゃあ、これから二人で買い物行くところだから」

「またね、みんな」

二人は楽しそうに去って行った。万里が楽しそうなので、思わず麗羅も顔か綻ぶ。

「じゃあ次は、誰のところへ行く?」

青幻が言ったものの、すぐに行き先は決まった。紗希が素早く右を向いて、目を輝かせたからだ。もちろん、彼女の大好きな志麻がそこにいた。

「志麻だ〜!」

「ちょっと待って、僕もいるよ!紗希!」

志麻に追いかけられている由宇もいた。

「何してるんだ?」

「よう!青ちゃん!暇だから由宇でもいじめて遊ぼうかなって」

「いじめてって言っちゃったよ!さっきまで、手合わせって言ってたろ?」

「だって、由宇が逃げ回るから」

「仕方ないだろ!」

言い争っている由宇と志麻を麗羅がこっそり写真に撮った。

「え?なに?」

「写真撮ったのか?」

「今、みんなの写真を撮って回っているんですよ」

「へぇ。楽しそうじゃねぇか」

「楽しいですよ。志麻さん」

「由宇も、帰ったら私と一緒に撮ろうね」

紗希がにっこり笑って言うと、由宇は顔を真っ赤にした。

「う、うん!もちろん!喜んで!」

「紗希〜?あたしとは?」

「もちろん志麻とも!撮ろうね!」

テンションの差を見て、こっそり落ち込む由宇であった。

「大変だな、由宇」

「うん。青幻君はいつも平和で羨ましいよ……」

「さぁて、由宇!続けるぞ!」

「わわわ、みんなまたあとでね!」

再び志麻にスイッチが入ったため、由宇も志麻も走っていなくなってしまった。

「慌ただしいね」

二人に手を振りながら紗希が言う。真似して手を振る青幻もうなずいた。



次に向かったのは俊輔のところだった。一緒にいたのは意外なことに亜怜紅だった。

「珍しいツーショットですね」

すでに二人にシャッターをきりながら麗羅が言った。

「たまたま遭遇したんですよ」

「あまり親しくもないからね」

「お兄ちゃん冷たい」

「ごめん、嘘だよ。嘘」

紗希に言われて撤回する亜怜紅。この二人の組み合わせは確かにあまり見ない。

「見た目はとってもいい二人だな」

青幻が言うと、麗羅も勢いよくうなずいた。

「なんでそんなに撮ってるんですか?」

「いえ、万里にも見せなきゃと思って」

「この二人のツーショットなら喜ぶだろうから」

「俺は別に、一緒に住んでるのに」

亜怜紅は困ったように笑った。麗羅はその爽やかな笑顔もすかさず撮った。

「これであとは流夏君だけだね」

「ああ、流夏はまだなんですね」

「麗羅もまだだろ」

青幻の一言に紗希がハッとする。

「ご、ごめんね、麗羅。シャッターずっと、麗羅に任せてたから」

「いや、私も忘れてたんだ」

「じゃあ、麗羅と流夏がまだ撮っていないんですね?」

「そうです」

俊輔と亜怜紅の目が輝いたのを、青幻は見逃さなかった。なんだ、仲良いじゃないかと密かに思う。

「せっかくだから、流夏と撮ったらどうですか?」

「そうですね」

亜怜紅がニヤニヤしながら近くの木に声をかける。

「流夏君、出ておいでー」

「なんだその言い方は!」

まったく別の方向から流夏が現れた。

「なんだ、やっぱりこの辺りにいたんじゃないか」

「もっと早く出てきてくださいよ。亜怜紅さんと探してたんですよ?」

「わかっていたから出てこなかったんだろ」

「じゃあ、なんで今出てきたんです?」

俊輔に言われて流夏はハッとする。迂闊だったと気付いたが、もう遅い。

「そりゃあ、流夏君の好きなワードがあったからだろ?」

「うるさい!」

図星なのだが、そう言うことしか出来ない流夏。すでに遊ばれている。

「ちょうどよかった!流夏君、今ね、みんなの写真を撮ってたの」

「あとは流夏と麗羅だけなんだ」

三人に声をかけられ、流夏は戸惑う。断りにくい三人だ。

「私と一緒は嫌ですか?」

麗羅に聞かれ、流夏は視線をそらしながら答えた。

「い、嫌じゃない」

それを聞くや否や、亜怜紅が麗羅からカメラを奪い、流夏を押す。

「ほらほら並んで!くっついてよ」

「綺麗に俺たちが撮ってあげますからね」

「生き生きすんな!うぜぇ!」

「流夏さん、やっぱり嫌ですか?」

「いや違う!」

二人に叫べば、麗羅も困った顔をする。板挟みの状況に困る流夏。楽しそうな俊輔と亜怜紅。何もわかっていない紗希と青幻。

「はい、じゃあ撮りますよー」

「笑って笑って!」

麗羅もちょっと困っている。流夏はそっぽを向いている。

「はい、チーズ」

その瞬間、どこからともなくバスケットボールが飛んできて、流夏は前につんのめった。

「市川さん」

「いや、流夏君だけにそんな美味しいことさせないから!」

撮れた写真を見て俊輔と亜怜紅は笑いをこらえている。

「市川修、覚悟はいいか?」

「ちっちゃい流夏君になんか負けないし!って待って、なんで刀抜こうとしてるの!?」

「お前を斬るために決まってんだろ!」

「ぎゃー!助けて俊輔!」

「俺は知りませんよ」

「そんな俊輔ー!」

この騒ぎに紗希と青幻は笑う。麗羅はこっそりため息をついた。

「ちょっと撮りたかったのに」

「え!?」

麗羅は聞いていた亜怜紅に向かって、指でしーっとやってみせた。亜怜紅もニヤリと笑った。

「もちろん内緒にしとくよ」

そのほうがおもしろいからね、というのは言わないでおくことにした。





11500hitの時雨優葵様からのリクエストで、緋色メインキャラのお話でした!
人数が多いので長くなってしまい、申し訳ないです。
ゲストで修も召喚してみました。
いらなかったですかね?

こちらも大変遅くなってしまい、申し訳ないです!
もし見ていらしたら、お納めください!

素敵なリクエストありがとうございました!
まだメインキャラが出ていないので、すごく楽しかったです!
ありがとうございました。








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あきゅろす。
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