テイルズオブlong
1話―現状
「あ…、またこのニュース…。」
【昨夜、吸血鬼が現れたという通報を元に、騎士団が動きましたが、既にその場には遺体のみで……………………】
ニュースを見て呟いたのはシングだ。
人懐っこそうな愛らしい目をした彼は、仕事へ向かうところだ。
しかし、ニュースが気になって見ているうちに、すっかり集中してしまった。
その時、チャイムが鳴り響き、ハッとした。
「おーい、シングー!遅刻しちゃうよー?」
彼女はコハク。シングの幼馴染みだ。
「おい!!聞いてんのかコラ、バカシング!」
彼はヒスイ。コハクの兄でシスコンだ。
「ああっ、もうこんな時間か!ごめん二人共!!ちょっと待って!」
慌ててシングはテレビを消して、荷物をひっ掴んで靴を履いて玄関のドアを開けた。
「もう、遅れちゃうよ!行こ、シング。」
「うん!」
「待てゴラァ!!コハクに触んな、このウジ虫野郎!!!」
コハクの手を握った瞬間にヒスイに殴られたシングはふと思いだした。
「そうだ、ヒスイ、ニュース見た?また吸血鬼だってさあ。」
「ん?ああ、そういやそんな話してたな。化け物どもめ、何しにルルーシャに来やがったんだ…?」
「…………もう、お兄ちゃん!!化け物なんて失礼でしょ!ねっ、シング!」
「………。」
「シング?」
コハクが問う。
「…オレは、アイツらは化け物だと思う。だってさ、アイツら、オレの家族を………!!」
「シング…ごめん、嫌な事思い出させたね。」
「………あ、いや、いいんだ!ごめんねコハク!!ほら、早く行こうよ!」
シングのその笑顔に、違和感をおぼえたが、コハクは何も言えなかった。
「うん、行こう、シング!!」
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