屋敷に来てから、私はその日のことをノートに書いています。所謂日記です。
仕事を終えて、机にいつものように向かい今日あったことを天井を見上げながら思い出す。
今日は庭の掃除と洗濯物を干すお手伝いをメイリンとして、その途中に突然セバスチャンさんに捕まって、後ろから抱きしめられて…
!な、日記に何書いてるんだろう。誰も見ないけど自分で書いていて恥ずかしい。慌てて消しゴムで消していると、
「おや、消しちゃうんですか」
すぐ真横から声。今、一番聞きたくない、そして見られたくない、声が。
「!?」
がたがたんと色んなところをぶつけるのも厭わずに距離を置こうと立ち上がり、後ずさる。
「な、な、セバスチャンさん!?何故ここに?と、いうかみ、見ないでくださ…!」
机の上に広げたノートをじぃっと見ているセバスチャンさんからノートを取り返そうと手を伸ばすが、身長差というのは本当に非情で。伸ばしても伸ばしても、ひょいひょいとかわされてしまう。そうしている内にぱらぱらと次々ページはめくられていき、無情にも全部読まれてしまった。
恥ずかしすぎて、今すぐこの場を飛び出したい。
読み終えたセバスチャンさんは此方に視線を移し
「私の事をあまり書いていないようですが何故ですか?」
あぁ、凄くわかっていて言ってます、ね。楽しそうな笑顔がきらきらしています。理由なんて簡単ですよ、あなたが毎日毎日セクハラしてくるので、日記に書いてる途中で恥ずかしさから消してしまう。こんな事書けない…!てことばかりなんですセバスチャンさんとのやりとりは。
「わかっている癖に聞いてくるなんて性格悪いですよ」
「おや、何で書いてくれないのか、なんてわかるわけないじゃないですか」
だから教えて下さい、と耳元で囁かれ耳が勝手に熱くなる。
「そ、んなの…恥ずかしいからに決まってるじゃないですか」
「それは、自惚れていいんでしょうか」
「…っ!」
「ねぇ、*?」
「も、好きにとってください…!」
クスリと、笑う声が聞こえたかと思うと、目の前に広がる黒。ふわりと抱きしめられたせいで、赤い顔を隠す為に押し付ける。
「これからは私の事も書いて下さいね」
「む、無理です」
「皆さんの事は書いてあるのに私については書いてないなんで淋しいじゃないですか、寧ろ皆さんに嫉妬します」
私の嫉妬は怖いですよ?何するかわかりませんし。と続ければ
「か、書きます、書かせて頂きます!」
にっこり。
「いい子ですね」
あ、嵌められた感が。
せめて書く代わりに書ける内容の行動にスキンシップというセクハラは留めてほしいです。
「それは無理ですねぇ」
嗚呼、かみさま。なぜ悪魔は何でもありな仕様におつくりになったんでしょうか。心の中まで読めるとかもう反則過ぎて泣きたいです、というかもう泣いてます。
「私は*が好きですし、可愛いですし、その想いが行動に出てしまうのはどうしようもないことです」
なので、諦めてありのまま日記に書いてください。毎日毎日、私が貴女の事をどれだけ好きか、愛しているかを態度で表しましょう。そして貴女はその日々を日記に書き、時折その日記を読み返して私の想いに縛られればいい。
(私だけ見ていればいいんです…ずっと、ね)
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