鼻歌を口ずさみながら、本を片付ける。沢山図書館並にある本はいくら整頓してもなかなか終わらない。
届かない所に置く本をまとめておき、下から順番に整理する。そして脚立を持って来て上の方の本を順になるように直しながら片付ける。
一通り終わったところで脚立から降りると、いつの間に来ていたのかセバスチャンが立っていた。
「どうしたんですか?」
表情が思わしくない様子のセバスチャンさんに何か嫌な事でもあったのかと心配になり声をかけると思わぬ答えが返ってきた。
「*、そこは倒れるところですよ」
「……はい?」
いまいち言葉の真意がわからず聞き返すと更に意味のわからない事を語り出した。
「本を片付けて、上まで手が届かないので脚立を使う。そして片付け終わって降りる時足を滑らせて落ちるというのが決まりなんです」
「……」
どこの決まりですかそれは。前に確かに落ちたことありますけどそう毎回落ちてたまりますか。
「さ、もう一度」
絶句する私にもう一度やり直すように言うセバスチャンさん。あまりの馬鹿馬鹿しさにその場をさっさと離れようと扉の方へ歩き出す。
「*、ちゃんとやって下さらないと。せっかくチャンスと思い頃合いを見てきたというのに」
「必要ないです、セバスチャンさんも仕事あるでしょう」
早く戻らないと厨房とか庭とかとんでもない事になりますよと付け足し部屋を後にしようとすると、がっしりと肩に手を置かれずるずると引き寄せられる。
「何ですか」
後ろからホールドされてしまえば抗う術もなく大人しくする他ない。床を見つめて呆れを浮かべた表情で後ろでにこにこしているであろう男にまだ諦めていないのか含んだ声で問うと
「疲れてるので癒しを貰おうかと」
「私は猫じゃないんですが…」
「猫よりつれないですねぇ」
「つれなくて結構で…ッ」
つっけんどんに返していると体を反転されて口付けられて言葉は中で消えてしまった。やっぱり人の悪い笑みを浮かべて私が息苦しくなっていく様子を嬉しそうに見ている。
「今更かもしれませんがセバスチャンさんてかなり変態ですよね」
「その変態が好きな物好きは誰でしょうか?」
髪を愛おしげに梳かれながら当分離してもらえないことを悟るとそのまま身体を預けた。
(結局こうなりたかったんでしょう?)
遠慮せずに飛び込んでくれてかまいませんよ
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