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選択肢は2つだけ







コトンと白黒のマスに私の負けを宣告される音が部屋に響く。

「う…」

「はい、私の勝ちですね」

坊ちゃんにチェスを教えてもらったおかげでルールもわかるようになり、それなりに出来るようになったのでセバスチャンさんと賭け付きで遊ぶ事にしたのだけど。ものの5分もしない内にチェック。

…悪魔とはいえ完璧すぎるのもどうなんだろう。

じっとセバスチャンさんの圧勝状態のチェス盤を眺め、そのままじろと恨めしげに見上げれば唇は弧を描き嬉々としている勝者と目が合う。
賭けの内容は勝った方がひとつお願いを聞いてもらう、とよくあるゲームのご褒美。私が勝ったら坊ちゃんにいつも作っているスイーツを作ってもらおうと思っていたのに。

「さて、どうしましょうかねぇ…せっかく願い事一つ叶えてもらえるわけですし、ね」

「……」

賭けをする時自分が負けることをあまり視野に入れていなかった自分を今さら悔やむ。そもそもセバスチャンさんに全てに於いて勝てたことなんて一度だってなかったのに、始めるときの私はどこから自信が来ていたのだろう。
顎に手を当てて考え込むセバスチャンを冷や汗を滲ませながら次に来る言葉を待つ。十中八九碌な事は言わないのが分かっているだけに沈黙が痛い。

沈黙を破り顔を上げて笑顔で願い事ひとつ。私が一番言いたくて言いたくて言えない事。

「*から私に愛の言葉を言って下さい。私はいつも言ってますが貴女からはあの日以来聞いていないので」

手を顔の前で組んでその上に顎を置き、満面の笑みで私からの行動を待つ体制をとる。

「そ、そんな」

「それが嫌なら*から私にキスをするでも構いませんよ?」

私から行動を起こすなんて初めてのこと。いつもセバスチャンさんはこんなに恥ずかしい事をすんなり言ってのけ、していたのだと思うと色々通り越して感心する。

悶々しながら、いざ決意するも目を合わせるだけで緊張して、口から頭で反芻する言葉が思うように出てこない。キスをすることも考えたけれど、これ以上顔を近付けるなんて出来ない…!

「*」

逡巡する私を呼ぶ声。嗚呼、その声と笑顔に弱い事は知ってるはずなのに、知ってて使ってくるあなたが憎らしい。







(こうなったら両方叶えて驚かせてしまおうか)



title 惑星




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