03-2
『どうした?』
巨漢の背後から、声と同時に別の男が現れた。
巨漢の男に比べると、幾分か華美な服装をしている。
隣に並んでいると華奢な印象を受けるが、よく見れば、胸板も厚く、腕にもしっかりと筋肉がついているのが衣服ごしにも判った。
新たな人物の登場に、青は極度の緊張状態に陥った。
「あんた達、誰? って言ったんだけど」
男達は驚いてた。
『言葉が……通じないのか……?』
『……そうみたいだな。レヴィ、おまえ判るか?』
『いえ。聞いたこともない言語ですね……』
更にまた別の人物が顔を出した。長髪を後ろで結んだこの男が、レヴィという名前なのだろう。
困ったなと言いたげな表情を浮かべる男達に、紅は警戒を緩めずに観察していた。
だから、青の呼吸に喘鳴音が混ざり始めていた事に、紅は気付くのが遅れた。
ヒューという、風が隙間から流れ込むような音が、青が呼吸をする度に、喉から聞こえて来た。
(まずい……っ)
青は、喉に当てていた手を、胸に持って行った。
(薬……)
微かな雑音は、やがて他人の耳にも聞こえるくらいの大きさになる。
青はズボンのポケットに入れた吸入器を取り出そうとしたが、息が出来ない苦しさに体の力が抜けてしまい、ずるりと屈み込んだ。
服を引っ張られた紅は、ハッとして青を振り返った。
「青っ!」
「こ……」
「大丈夫!?」
紅は青がこうなるおそれがある事を失念していた己に、臍を噛んだ。
青の胸からは、砂嵐のような音が響いていた。
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