珠華に心を寄せながらも、月に惹かれ始めている己を、覇久毘は自覚している。 この奇妙な合致は一体何の神の悪戯か。それとも、何食わぬ顔で花嫁を迎えようとしている覇久毘への嫌がらせなのだろうか。 「采国の姫か……憐れな」 愛のない政略結婚の駒にされた、世継ぎを臨む為だけに迎えられる花嫁。 「憐れなのは、私も同じか」 覇久毘は独りになった執務室で、ひっそりと自嘲の笑みを浮かべた。