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05-2


「…………」

迂闊だった。
イシュヴァルトは唇を噛み締めた。
こちらが内々で処理してしまいたくとも、相手まで同じとは限らない。ウランバルトにしたら、紫の瞳を持つ双子を隠す必要はどこにもない。
散策という名目で城内を歩き回り、双子の存在を知らしめたのだ。
新しい≪双月の巫≫の存在を――。
どうりで噂が広まるのが早い筈だ。

(……部屋から出ないように言うべきだったか)

いくら地方貴族でも、一貴族ならば事の重要性が判り、言われずとも極力双子を部屋から出さないようにするだろう。
どうやらウランバルトは、地方貴族としてくすぶっているより、≪双月の巫≫を足掛かりに城の中枢に食い込んでくるつもりらしい。
例の双子が本物の≪双月の巫≫と世間から認められれば、ウランバルトは主都での発言権を得るどころか、彼の言葉を重くおく者も出てくるだろう。
現に、城内の雰囲気に、青は居心地悪そうにしながら、部屋に籠もりがちになっている。
心配になって、一週間程前から紅に泊まりがけで側に居てくれるよう頼んでいるが、このままでは、青に実害が及ぶという、イシュヴァルトが危惧している事が現実になってしまう。

「引き続き頼む」

「御意」

サウールは執務室から消えた。初めから居なかったかのように。

(……セイとコウを、離宮に避難させるべきだろうか)

だが、それは誤解を生みかねない。偽物だと知っていながら、青と紅を≪双月の巫≫に祭り上げ、本物が現れたので慌てて隠したのだと言われ兼ねない。
偽物は間違いなくあちらだ。だが、このままでは青や紅が偽物だと仕立て上げられてしまう。

「……どうすればいいんだ」

良い案が浮かばないイシュヴァルトは、ひとり頭を抱えた。






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