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06



06.



「なーんか、ヤな雰囲気」

「…………」

青は、アーシュレイアを抱きしめる腕に力をこめた。
近頃の城内の微妙な雰囲気は、青も感じていた事だ。
まるで腫れ物に触るかのように、女官や従者達がよそよそしい。今まで愛想良く笑っていた貴族達も、青や紅の姿を見るとそそくさと離れて行く。
青が正妃でなければ、紅がグランファード国屈指の公爵家の保護を受けていなければ、今頃はどうなっているか判らない。
そんな城内の雰囲気をアーシュレイアも感じ取っているのか、ここのところ情緒不安定ぎみだった。

「やっぱり、アレが原因だよねぇ」

先日、突然現れた≪双月の巫≫の存在。
彼等は、部屋に引きこもった二人とは反対に、王宮内のあちらこちらに顔を出しているようだ。
彼等がこの城に来てから、今までの猛暑は何だったのかと疑いたくなるような爽やかさに、青達へ向けられる懐疑の視線が強まっていた。

「……僕達、本当は≪双月の巫≫じゃなかったのかな……」

「そんな訳ないじゃん!」

「……でも」

「じゃあ、僕達が≪双月の巫≫だって認めてくれたイシュリアは? セイレスやクレストはどうなるの?」

確かに、紅の言い分も間違ってはいない。
だが、今、彼等が自分達の呼び掛けに応えない意味を考えると、青は紅のように思うことはできなかった。

「青は、イシュトが信じられないって言うの?」

「……そんなこと、ない、けど」

信じている。
信じてはいるが、イシュヴァルトが≪双月の巫≫を選ぶ訳ではない。天の神々が選び、イシュリアと双月神が選ばれた巫をこの世界に呼び寄せるのだ。

「あんな禍々しい巫がいる訳ないでしょ」

「……けど」

「あーっ、もう! しっかりしなよ! 青の気持ちが揺れたら、アシュレイだって不安がるんだよ? それに、イシュトだって心配するでしょ!」

「ふぇ……」

紅の勢いにびっくりしたアーシュレイアが泣き出し、青は慌てて背中を軽く叩いた。

「あ……ごめん」




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