[携帯モード] [URL送信]
03



03.



謁見の間へと続く扉の前に、近衛兵が警備で立っており、クレウィーア達の姿を認めると敬礼をしてきた。
リードグレンが目で扉を開けるように命じると、近衛兵は扉横の緑の紐を引いて内部の者に知らせてから、扉に手を掛けた。
これは、重大な事柄を話し合っている場合、話を聞かれない配慮でもあり、怪しい者の入室ではない事を示している。
襲撃などを受けた場合は、緑の紐の横にある白い紐を引く事になっている。

「どうぞ」

左右から開かれた扉の先に、壇上の玉座に座したイシュヴァルトの姿があった。
イシュヴァルトの他には警備の近衛兵が数人と、三人の見知らぬ背中があった。
青は紅の手を握り締めたまま、イシュヴァルトに視線を向けた。
姿を見ただけで、押しつぶされそうになっていた不安が、嘘のように胸から消え去った。
イシュヴァルトは、青に勇気と強さ、何よりも安心をくれる唯一の存在であり、彼とならばどんな困難も乗り越えて行けると思える存在でもあった。

「来たか」

王らしい威厳を醸し出していたイシュヴァルトは、青の姿を認めて瞳を和らげた。

「お待たせ致しました。≪双月の巫覡≫をお連れ致しました」

クレウィーアは一人前に進み出て礼を取り、イシュヴァルトへと報告してから傍らに着いた。
リードグレンが青と紅の傍に寄り添う。

「こちらへ」

イシュヴァルトが手を差し伸べて、青と紅を呼び寄せる。
戸惑う二人の背中をリードグレンがそっと押してやると、意を決したように紅が手を引いて歩み寄り、イシュヴァルトの横に並ぶ。

「≪双月の巫≫だ」

相対する三人の視線が二人に向けられる。
一人は初老の男性だ。身なりから察するに貴族のようだが、それ程爵位は高くないらしい。地方貴族といったところか、服を着こなしているというより服に着られているといった感じがあり、どうやら主都に到着して慌てて整えたようだった。
残りの二人に、青はハッと目を見張った。
まだ十四、五くらいだろうか。同じ顔に、左右色の違う瞳が印象だった。

(……双子)

まっすぐに向けられる彼等の左右色の違う瞳は、青や紅と同じ紫。

(どうして……)

青の瞳が揺れる。
なぜ、今なのか。セレスト達と連絡の取れない今、彼等が現れたのか。
青はそっと唇を噛み締めた。

「彼等は、自分達こそが≪双月の巫≫だと言っているが、おまえ達はどう思う?」

≪双月の巫≫だと名乗り出る人物が現れたのだと、事前にクレウィーアから説明されてはいたが、この目で見るまで信じられなかった。




[*前へ][次へ#]

6/56ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!