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02



02.



数日後の昼下がり。
いつものように、読書をしたりお茶を楽しんだりと思い思いに過ごしている青と紅の下に、イシュヴァルトから呼び出しがかかった。

「……え?」

「申し訳ありませんが、謁見の間まで来ていただけますか」

しかも、それを伝えに来た相手は従者や女官ではなく、宰相のクレウィーアだったものだから、二人は何かがあったのだ判った。

「で、何があったの?」

深刻そうな表情を顔に貼り付けているクレウィーアに、暑さにだらけていた紅の態度も改まる。

「道すがらお話致します」

「えっと……着替えはしなくてもいいの?」

すぐに部屋を出ようとするクレウィーアに、青は戸惑いを見せた。

謁見の間には実はふた通りある。
ひとつは通常イシュヴァルトが公務の際に使用している会見用の部屋で、街の有力者や国内の貴族達との謁見に用いられる。もうひとつは、他国の使者などの特別な場合にのみ使用される、玉座の置かれた正式な謁見の間である。どちらもが謁見の間なのだが、どちらの部屋か解るように、前者を会見の間、後者を謁見の間と呼び分けている。
その謁見の間に通されるような人物が、イシュヴァルトに謁見を求めている者――もしくは謁見を許された者――が居るからに他ならない。だからこそ、青はそれなりの衣装に改めた方がいいのではないかと思ったのだが……。

「必要はありませんよ」

言葉は丁寧だが、クレウィーアは略式正装すらする必要はないと、きっぱりと言い切ったのだ。
口調には少し棘が含まれているように感じられ、クレウィーアには珍しい事だと青は思った。

「? ……なら、いいんだけど」

読みかけの本にしおりを挟むと、青は寝椅子から立ち上がった。紅はというと、すでに扉の前に待機している。

「おい、まだか?」

廊下側から突然扉が開かれた。

「……リード、ノックもなしに……」

ひょっこりと顔を覗かせたのは、リードグレンだった。
クレウィーアだけでなくリードグレンまでが揃っており、しかも、どちらも真剣な表情を浮かべているのを見て、青の胸に数日前の不安が甦る。

「レヴィ待て。おまえの言いたい事は解るが、それは後だ」

文句を言いおうと開かれたクレウィーアの唇を、リードグレンが遮った。



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