さくら【04】-3
タイミング良く停車した駅で、彼等はバタバタと降りて行った。
彼も僕の手を取って、ホームに降りる。
電車は何事もなかったかのように走り去って行った。
「あの……」
「ここに座って」
誰も座っていないベンチに強引に座らされたかと思ったら、彼はそのまま一人、どこかへ消えてしまった。
どこへ行ったのかな……。
もしかして、駅員さんを呼びに行った、とか?
靴音がして、ハッとそちらを見ると、彼が戻ってきた。
心なしか、表情が固い。
面倒を押しつけられたって、感じてるのかな。
そうだったら、どうしよう。
「ほら」
彼は僕の横に座ると、手に持っていた物を手渡してきた。
「……あ」
それは、ジュースの缶だった。
それも、僕が好きなメーカーのカフェオレ。
「あ……ありがとう……ございます」
偶然だったんだろうけど、彼が僕の好きな物を知ってくれているような気がして嬉しかった。
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