05-2
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「紅」
一晩姿を隠してしまったので、心配を掛けてしまっただろうと、謝罪の為に紅は彼等を訪れた。
紅を見た途端、今にも泣き出しそうな表情の青が、ぎゅっと抱きついてきた。
「ごめんね、心配かけた……」
紅にしがみついたまま、青はふるふると首を横に振った。
「イシュトもレヴィも、心配かけてごめんなさい」
「……もう、大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫」
しっかりした受け答えと濁りのない瞳を見て、二人はほっとしたように肩の力を抜いた。
腫らした瞼と充血した眼に、一晩泣き明かしたことが判ったが、敢えて何も言わなかった。
「青、放して?」
青は渋々と紅から腕を解いた。
紅は体を解放されると、イシュヴァルトに向き直り、表情を改めた。
「イシュトにお願いがあるの」
「お願い?」
この状況下で申し出る願いなど、簡単に想像できるだろう。
「僕を行かせて欲しい」
イシュヴァルトに任せておけば、必ず見つけ出してくれる事は解っている。けれど、何もしないで待っているのは、紅の性分ではないのだ。
リードグレンから剣の訓練を受けて、ある程度は使えるようになったとはいえ、紅は実戦を経験したことはない。もし現場で野盗に襲われた場合、役に立てるどころか邪魔になる可能性もある。
それは紅も十分承知している。
「それは……」
さすがにクレウィーアが難色を示した。
「…………」
イシュヴァルトがどういうつもりなのか、その表情から伺うことはできない。
イシュヴァルトはただじっと、紅の瞳を覗き込んでいた。
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