01-3
「困りましたね。このままでは、いつ触れを出せるか判らないじゃないですか。生まれた赤ん坊が男子か女子か、国民は今か今かと発表を待ちわびているというのに……」
ふ、とクレウィーアが溜め息を漏らした。
「だから悩むのではないか」
生まれてきた赤ん坊の性別が性別なだけに、イシュヴァルトが悩むのも仕方がない。
「……確かに、そうだよね」
神妙な表情で青が頷いた。
それもその筈。
生まれてきた赤ん坊は、青と同じく両方の性を持っていたのだ。
女子のような可愛らしい名前をつけても、男子らしい名前をつけても構わないのだが、成長後に図体がデカいのにアリアだのマリアジュールなんて名前だと可哀想過ぎる。逆もまた然り、だ。
だから悩む。
どう成長してもしっくりくる名前をと。
何より──名前とは、その存在(もの)の本質を現すもの。その存在の一生を、気質を定めてしまう程大切なもの。気分でつけるようなものではない。
子供には、鮮やかで幸福な日々を過ごして欲しいと願う親心だ。
「まぁ、いいですけど……ね」
と、クレウィーアは諦めにも似た呟きを落とした。
うんうんと必死に悩むふたりを眺めながら、紅は少し羨ましいと思いつつ窓の外に視線を移した。
窓の外は、眠気を誘う程に心地良さそうだった。
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