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男【02】


電車に彼が乗り込んでくる。




後ろから続いて乗り込んでくるであろう、不適な目を向けるクソガキの存在はムカつくが、俺以外の奴らを牽制してくれるのは、正直ありがたい。




奴がいない。
今日は彼一人なのか?


周囲の男達もそれに気づいて、遠慮の無い眼で彼を見る。


くそっ。
そんな目で見るな。


彼が気づいて怖がったら、もうこの電車には乗ってこなくなる。
それだけは避けたい。

俺と彼の接点は、この電車しかないのだ。


彼の事が気になって視線を向ける。


え?


彼も俺を見ている?


一瞬絡んだ視線に、俺は頭が真っ白になる程に動揺した。


俺の邪な想いがバレたのか?
いや、そんな筈はない。


彼は重なった視線をそっと外すと、ほんのりと赤くなった頬をおさえて俯いた。


ひとつの思いが胸を過ぎる。


まさか、彼も俺を気にしてくれているんじゃないか、と。





まさか、な。

俺は自嘲した。


あの行動に、何の意味もない。


彼には、一緒に通学する彼氏がいるじゃないか。




俺は、電車から降りていく彼の後ろ姿を、ただ、じっと見送った。




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